序
笑いあり、涙ありの喜怒哀楽。
エロ、グロ、ナンセンス。アイロニカル。
狂ってしまおうにも狂いきれない哀愁。
かつて私の頭のなかでは、種々の妄執とでもいうべきチカラが渦を巻き、脳みそを支配した。脳からこぼれ出た渦は、ときに怒り、ときに情熱、ときにウェットな感情となって形をなし、私を「なにか」にむけて突き動かした。破滅的で衝動的で、そのくせ脆く、儚さを言い訳にして自身の無力を隠したりした。ある種の強烈な万能感と同時に、それと同じだけ何者にもなれない無力感に支配されていた。
月日を経て、いつからか私のなかのその渦は雲散霧消していた。たいへん喜ばしいことであったが、その喪失は私の頭のなかにぽっかりと穴をあけたようで、なにも思いつかなくなった。
人は私を大人になったと言うが、あのとげとげした苦々しい感覚が消えたことを、すこしだけ、さびしくおもう私がいる。
これは私が散文詩の形を借りて、世の中すべてを苦々しくおもっていた過去の私と邂逅するものである。ありきたりな独白である。解剖である。そして小さな世界を形作る結界を破る、紛うことなき救済である。
一読を乞う。