第28話 地は轟く1
時が止まった空間を先に斬り出したのはファイアだった。
「うわああああ。」
激しい雄たけびとともに、ファイアの剣が唸りながらケイの喉元を狙う。ケイは間一髪でのけ反り避けた。
体勢を崩したケイに向かってファイアの二次、三次の攻撃が連なるように繰り出される。ケイはギリギリのところで避け続けた。
お互いの息があがる。
「この男…。」
ケイは猛攻を続けるファイアの顔を見た。目を見開き、赤黒く光る瞳で自分の命を奪うことに全てを賭けてきている。一瞬見ただけでそう悟れる鬼が目の前にはいた。
ケイは歯を食いしばり、ファイアの剣を避けたその右足で地面を蹴った。
「があああああ。」
ケイの左腕がファイアの顔をめがけて飛ぶ。
それまで前に出続けていたファイアが一瞬たじろいた。何とか迫りくるケイの獣の爪を剣にあてたものの、思わずファイアは後ろに下がった。
これを好機と言わんばかりに、今度はケイが一心不乱に左腕を振りかざす。
ケイの攻撃を全て防ぐと、ファイアはケイに向かって突進していく。
「愚かじゃああ。」
ケイは飛び上がり空中を鋭く回りながら、ファイアの背中をとった。そして、すぐに反転し、獣の爪でその背中を切りつけた。
「ぐっ。」
ファイアは膝が崩しながらも、剣を地に刺し踏みとどまった。
「浅かったか。」
ケイは左腕を引き、ファイアの体に鋭利な爪を突き刺そうとした。
その瞬間、背を向けていたファイアが左足を軸にし、鋭く反転した。地から振り上げられた剣が砂煙を纏いケイを襲った。
「がはああっ。」
ケイはその刃を避けきれなかった。身にまとっていた衣は破け、そこから赤く血が滲み出す。
ケイも思わず膝に手をついた。ただ、ファイアも背中に受けた傷のせいか追撃が繰り出せない。
荒い息を吐き出す二人。お互いの視線が交じり合った。
“もうあの時とは違う。違う生き物が目の前にいる。”
そう思うしかない姿がその目には映っていた。無意識のうちに口角があがった。
ファイアは震える体に喝をいれ、剣を握り直した。ケイも負けじと左腕を膝から離し、力を抜いた。
お互いが次の一撃のために力を絞り出そうとしたその瞬間、二人の間を歓声と怒号が入り混じった風が突き抜けた。
ハッとして気づくと二人の周りには王国軍の兵士と獣人たちが何重にも輪をつくっていた。
そして彼らの視線は対峙するタントタンとフーガン、ミニカに向けられていた。




