第27話 舞台3
塔の外に出た瞬間、異様な熱気が3人の体を包んだ。獣人たちが進撃する速度が早く、戦いの中心が思いのほか塔の近くまで迫ってきていた。
「やつら破竹の勢いだな。」
フーガンが思わず呟く。
塔の周辺にはハーク・ジー3世に率いられて遊撃隊とともにザジロに乗り込んだ隊が守備の陣をとっていた。その為、遊撃隊の登場に気づいた兵士たちがざわめき始める。
そんな隊の中にどっしりと座り前方を見据える男が見えた。王国軍のトップであるアクオ将軍であった。
「ミニカ。」
フーガンはアクオ将軍の姿を確認すると、ミニカに一声かけた。ミニカは黙ったまま頷くと、ざわめきの収まらない兵たちの間をぬってアクオ将軍のもとへ駆けていった。そして、ミニカの言葉にアクオは二度頷くとミニカの傍に数人の兵士をつけさせた。
「アクオ将軍に話は通したわ。ここから先、両軍入り乱れいて戦いの中心まで割って入るのが大変だからってことで彼らをつけてくれた。」
2人のもとへ戻ってきたミニカは後ろについた兵士たちを見ながらそう告げた。
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獣人たちを囲む兵の隊は何重にもなっていた。その中をアクオがつけた兵を先頭にして遊撃隊はタントタンとケイがいるであろう前線地に向け急いでいた。
「これだけ兵がいてもジリジリと全体が後退させられている感じがするな。」
フーガンの言葉にミニカが短く「ええ。」と頷く。
事実、獣人たちの勢いに負けていた王国軍は前に出れず、逆に塔のほうへと押されていた。
そんな流れに逆らうようにして遊撃隊はなおも前へ進む。
(獣人の唸り声が近い。…そして、隊列が乱れている。)
ファイアは目を大きく見開き前を見た。
その瞬間、空に赤いマントが舞った。そして、太陽にかざすように左腕が大きく振りかぶられる。赤く染まった左腕の先に鋭く光る爪が見えた。
ファイアは兵士たちの間を無理やり抜け、剣を前に出した。鈍く思い衝撃が身体に響く。
「ぐっ…。」
修羅のような表情を浮かべながらその獣人がファイアの顔を見た。そして、鋭く睨み付けるような眼がゆっくりと丸くなる。
周囲で乱戦が続く中で、2人だけがその空間から取り残されているかのような錯覚をファイアは感じた。
「…ファイア。」
「…ケイ。」
お互いの名前が相手の口からこぼれ落ちる。
ファイアの目の前には綺麗であった髪をボロボロにし、全身に返り血を浴びたケイの姿があった。




