第2話 遊撃隊3
3人はハークシーを目指して西街道を進む。ハークシーまでは約15日の長い道のりだ。街道沿いには農村が広がっており、小麦が風に揺られていた。
ハークグランを出て最初の夜はロセという小さな街に泊まった。
その夜、ファイアはフーガンに呼び出され外に出た。月が明るい夜である。
「おい、お前さんはハークグランを出た時に今回の指令に疑問を持ってるようなこと言ってたな。」
フーガンは愛用の竹筒に入った酒を飲みながら話を切り出した。
「はい…、カイブ隊長のされたお話の信憑性と指示の簡素さに疑問を持ってしまいました。」
「初めに言っとくがカイブ隊長の指示はいつもあんな感じだ。だから俺たちはまず情報収集から始める必要がある。まったく…待遇と比べて割りが合わない仕事だよ。」
「あと、朝も言ったが俺たちは上の指示されたように動くだけだ。兵士の基本だろ?」
ファイアは「はあ…。」と返事をする。その声を聞いたフーガンはため息をついて頭をかく。
「なんでお前さんは遊撃隊にきたんだ。」
「私がいたタギ地区駐屯所の隊長に推薦されたと聞いています。私の武術と…あと強い愛国心を評価していただいて。」
「強い愛国心…ねえ。」
「お前さん、国を愛する気持ちを持つのは立派なことだが、盲目的になりすぎるなよ。」
「盲目的な愛国心…。」
「ああ、それだけを頼りにこれから遊撃隊の兵士をやっていくつもりなら気をつけな。確かにこの国の風土は綺麗だ。だが、王国の中央まで綺麗とは限らないぞ。」
ファイアはフーガンの忠告に驚き、彼の顔を見た。フーガンの視線は遠くにある。
「さて、明日の出発も早いし寝ようか。この仕事は大きいし時間もかかる。疲れを取らなくちゃ最後まで持たねえぞ。」
***
3人がハークグランを出て5日が経ち一向はザジロ盆地に入った。西の方角にはフセ山脈の姿がくっきりと見える。
ファイアは道端に立つ古い石碑を見つけた。
「ここが150年前に祖先が獣人族を打ち破って絶滅させた場所ですね。歴史を感じるなあ。」
少し興奮した様子のファイアを見てフーガンがカハハと笑い声をあげた。
「お前さん、獣人族の末裔だってまだ居るかもしれないだろ。フセ山脈によく出るって話聞くぞ。」
「もうあなたは本当に人を小馬鹿にするのが好きね。」とミニカがため息をつく。
「でもねファイア、フセ山脈に獣人族はいないけど狼なら本当によく出るから注意が必要よ。」
実際に竜神参りをする際の難所のひとつがフセ山脈だった。狼に襲われ命を落とす人も毎年後を絶たなかった。
「俺たちはハークシーに早く行って情報集めなきゃいけないんだ。フセ山脈もとっとと越えてしまおうぜ。」
フーガンは気合を入れるためか竹筒のお酒をグッと飲むと歩く速度をあげた。3人はフセ山脈へと続く西街道を進んでいった。