第22話 虚崩3
森の中をぐいぐいと進んでいくケイの後をジプとライは必死に追いかけていた。
「ケイのやつ、進むスピードが速すぎじゃないか。あれじゃ、歩いているか、走っているか分からんぞ。」
息が切れて疲労困憊なジプにライは呆れた声を出す。
「それはジプの体力が無さ過ぎなんじゃ。それより、ケイ姉が自ら進んで歩くようになったんじゃ。そっちのほうが大事じゃと思うで。」
確かに、当初のケイは遊撃隊との再会場所として指定されていたカヤに行くことを拒んで動こうとしなかった。ならばと、タントタンは実の妹であるライを呼び寄せ説得にあたらせた。そこから数日後、ケイはポツリポツリと遊撃隊について話始め、フセ山脈を発つまでに至ったのである。
「そもそもなんでライもついて来とるんじゃ。」
「それはジプじゃケイ姉のスピードについていけれずに逃げられる可能性があるからじゃろうが。現にこんな状態じゃし。」
ライのジトっとした視線にジプは思わず言葉が詰まった。そして話題を変えようとライに質問をする。
「その…、今向かっているカヤという街は遠いんか。」
「遠いな。ここからじゃまだ何日もかかる。まあ、小さな街じゃ。」
「そうか。さすがは間者じゃ。その辺りのことはよく知っとる。」
ガハハと笑い声をあげるジプの顔を見ながらライは冷たい口調で言う。
「もっと速く進め。じゃないとケイ姉に置いていかれるぞ。」
*****
森を歩き続けること10日。ふもとに小さな集落が見える。その周りには田畑が広がっており、街一帯にはのどかな雰囲気が漂っていた。
「カヤの街が見えたな。ケイ姉。」
ライの言葉にケイは小さく頷くとカヤの街をじっと見つめて息をのみ込んだ。
「あれがカヤか。のんびりとした感じの街じゃな。…戦争とは縁がなさそうな雰囲気じゃ。」
少し遅れてジプがライの横に並び、街の様子を見る。
「兵士の姿は見えんな。こちらからの侵入は容易そうじゃ。わざわざ防御を固めとる中央を狙わんでもえかろうに。」
「その話は今せんでもえかろう。」
ライの言葉にジプは「そうじゃった」と言いながら口を閉じる。
ケイの耳には2人の会話が全く入ってきていなかった。ただただ、緊張と黒い渦がまく瞳でじっとカヤの街を見つめていた。




