第22話 虚崩2
先程までとはうって変わって苦しそうな表情のケイを見て、ジプの言葉も途切れてしまった。
今でこそ二人の立ち位置は捕えた側と捕えられた側になってしまっているが、元々は同じ志のもとに人間と戦い、そして獣人族の未来について語り合ったいわば戦友である。
(昔はあんなに勇ましく格好良かったケイがこんな姿になるとは、…胸が苦しくなるわ。)
ジプはケイから目を逸らすように空を見上げた。この男、体は人一倍大きいが、仲間思いな心の持ち主なのかもしれない。かつての戦友に完全に情を持っていかれてしまっている。
その時、ジプの背後から彼に話かける男が現れた。
「なんじゃ、ケイとは長期戦になっとるみたいじゃなあ。」
その男を見てジプが驚いた顔をする。
「もう動いて平気なんか、タントタン。」
タントタンは少し右肩を庇うような仕草を見せながらも、ニヤリと笑いながら答える。
「族の頭がいつまでも寝とくわけにはいかんじゃろう。まあ、次に攻勢に出るのはしばらく先なんじゃ。それまでにしっかりと治してやる。」
そして、タントタンは顔を伏せ苦しそうな表情をしているケイのほうを向いた。
(こいつ俺がここに立っていることに気付いておらんのか…?)
「久しぶりじゃなあ、ケイ。いや、この前に会ったばかりか。」
タントタンは少し大きめの声を出す。それでも、顔を伏せたままブツブツと何か呟いているケイ。タントタンはそんなケイの顔を覗き込もうとしゃがんだ。
ケイの顔がゆっくりとタントタンを捉える。
「ケイよ、どうしたんじゃ。そんな深刻な顔をして。俺の肩に傷をつけたあの男が率いる連中ともう一度会う約束をしとるんじゃないんか。」
タントタンの言葉にケイは大きく目を開く。
(…ライが情報を流したんか?いや、ライを責めることは出来ん。軽々しく話してしまった私に全責任がある。タントタンにこのことを把握されてしまった以上、約束の場所に行くことは厳しくなった…か。)
諦めの笑みを浮かべるケイに対し、タントタンは予想の斜め上を行く言葉を投げかけた。
「その場所がどこか知らんが行って来いよケイ。」
タントタンはニヤリと笑う。この言葉に驚いたのはケイだけでは無かった。
「何を考えとるんじゃタントタン。」
「そう慌てるなジプ。」
タントタンはジプの耳元で囁く。
「やつらはきっと来ない。人間とはそういう生き物じゃ。そうなればケイは人間への憎しみの気持ちを思い出すじゃろう。そうすれば立派な戦士の復活じゃ。お前も見たいじゃろ、血に染まるケイを。」
「じゃが、しかし…。」
「もしも、本当にもしもその場所に人間が現れたとしたら殺せばええだけじゃ。あいにく、戦士が集まるまでには時間がかかる。俺も行きたいところじゃが頭が不在となるのは良くないじゃろう。ジプ、お前がケイと一緒にいけ。」
有無を言わせぬタントタンの言葉にジプは渋々ながら頷くしかなかった。




