第21話 凱歌2
ファイアが目を覚ましたその日の夜には、遊撃隊を乗せた馬車がロセに到着した。
「さすがに王国軍の馬は速いな。」
フーガンはひと仕事を終えて水を飲む馬を見ながら感心する。すると、後ろから兵士が早く建物の中に入るようフーガンを急かす。
「そう急かすなよ。まったく待遇がいいのか悪いのかよく分からんな。」
フーガンがぼやきながら歩き出す。ロセに到着する直前にようやく目が覚めたファイアとミニカも、フーガンの後に続くように重たい足取りで建物の中へ入っていく。
現在、西街道沿いにある小さな宿場町・ロセは完全に王国軍が管理しており、平時は宿泊所として利用されている建物が王国軍の中継基地となっていた。門の前では松明が燃え盛り、槍を持った兵士が立つ。
(王国軍の目がある中でファイアと話が出来るかどうか。危ういな。)
フーガンは頭を下げる兵士を横目に小さく舌打ちをする。
建物の中に入ると、まず3人はロセを任されているというノアーという男の前に通された。
ノアーは白髪頭を掻きながらすこし不機嫌そうな顔をしている。
「私は現在ロセの管理を命じられている王国軍第9隊隊長のノアーだ。君たちのクイでの活躍は耳にしている。そんな君たちに危害がないように今夜は特に注意しよう。だからゆっくりと休んでくれ。」
ノアーのいる部屋を出ると兵士が3人を部屋まで案内する。
「この3室が皆さんに泊まっていただく部屋になります。なお、警備上の問題で3人には部屋から外出しないようにお願いしたい。」
「ちょっとこの2人とこれまでの苦労話でも語り合いたいなんて考えているんだが、駄目か?」
フーガンが冗談めいて言った言葉に対して、兵士は首を横に振る。
「そうかい。ならいい。でも、部屋に入る前にちょっと便所に行ってくる。」
フーガンはファイアの腕を掴みながら兵士の顔を見る。
「1人で便所に行くのが怖いんでね。この歳になって恥ずかしい男だろ。」
フーガンのニヤリとした表情に兵士はうろたえる。
「男の便所を覗くなんざ、悪趣味中の悪趣味はやめてくれよ。」
*****
フーガンは本当に便所に行きたかったのか駆け込むようにして用をたす。ファイアはどうしていいのか分からずフーガンを待っていた。チラッと外を見ると、兵士がこちらの様子を監視するように立っていた。
用をたしたフーガンがこちらに来た。兵士がこちらを見ているのを確認すると、フーガンは手を洗い、ポケットの中で何かを探しだした。
「あー、ハンカチを忘れたようだ。おい、お前さん、何か拭くものを貸してくれ。」
ファイアは無言でハンカチを差し出すと、フーガンは似合わない笑顔を浮かべてそれを受け取る。そして、手を拭き終えるとハンカチをファイアのポケットにねじ込むようにして返した。
フーガンは兵士に背を向けた格好でファイアの顔を見る。そして、声を発することなく口を動かした。
「必ず1人で見ろ。」




