表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地の竜、空の虎  作者: 遠縄勝
序編
6/96

第2話 遊撃隊1

「あの…大事なお話とは何でしょうか、アイス隊長。」


 ファイアはろうそくの火だけが揺れる部屋にアイスと2人きりでいた。駐屯所の裏にある兵士の宿舎の食堂でミラたちと夕食を食べている時に「大事な話がある。」とアイスから呼び出されたためだ。普段はなかなか見ることのないアイスの険しい表情にファイアは戸惑っていた。


「単刀直入に言おう。ファイア、君の遊撃隊への配属が決まった。」


「遊撃隊…。それは初めて聞く部隊ですが…どのようなところなのですか。」


「まずはそこからだな。遊撃隊は王国軍の組織とは切り離された別の部隊だと思ってくれていい。主な仕事は王国を裏から支えることだ。」


「あの…、王国を裏から支えるとは…。」


「ファイア、ハーク王国ではこれまで大きな乱が起きたことが無いことは知っているな。その要因は何だと思う。」


「それは…歴代のハーク王や現在の王ハーク・ジー3世様の政治が良いからだと考えます。」


「うん、そうだな。それもあるが一番の大きな要因は乱の芽を小さいうちに摘んできたことだ。」


「…まさか、遊撃隊とは…。」


 ファイアはアイスが言いたいことに気付いた。また同時に1つの疑問がわいてきた。


「…何故私がその遊撃隊に配置されるのでしょうか。」


「私が推薦した。君の優れた剣術と向上心は遊撃隊でも通用する。それに君は遊撃隊の中で活躍するために最も必要な“強い愛国心”を持っている。」


「王国のために頑張ってくれ。」


 アイスは大きく開いた目で真っ直ぐファイアを見ている。ファイアはその目の威圧感と話の大きさに少しの恐怖感を抱き、立ち尽くすことしか出来なかった。


***


(遊撃隊…秘密裏に反乱の種になりそうな組織を壊滅させたり、…暗殺…を行う部隊。)


ファイアは兵士の宿舎にある自室に戻ると自身のベッドの上に座り込んだ。


(人を殺したことなんて一度もない、兵士になってからも。そんな自分に務まるものだろうか。)


 こんな事を考えながらもファイアには拒否権が無いということは分かっていた。あくまで配置転換の命令だ。それでもファイアの葛藤は続いた。


(「王国のために頑張ってくれ。」か。)


 そして夕方にパジェやミラ、シェンと話したことを思い出す。


(俺はこれからも王国のために誇りをもって兵士としての職務を全うしている、なんて胸を張れるのだろうか…)


 ファイアは目を見開き天井を見つめながら無理やり笑顔を作る。


(いや、こうなったらやってやるしかない。この王国の景色や国民の笑顔が守れるなら、…その為なら自分の身が汚れようとも構わない。)


 ファイアは自身の兵士としての道が深く暗い闇の世界に通じていく感覚に負けそうになりながらも、「王国のために…」と自分に発破をかけながら前に進む事に覚悟を決めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ