第18話 クイの戦い3
その高見櫓の周辺には獣人たちが群がっていた。その中心に膝に手を着くファイアと、その前に立つケイがいた。
(タントタンにやられた傷がまだ完治しとらんのに無理があったんじゃ。)
ケイは苦しそうなファイアの息使いを聞きながら取り囲む獣人たちに威嚇の唸り声をあげる。
「ケイ…、俺はまだ戦えるぞ。俺は獣人を殺すんだ。殺して、殺して誰も死なせないんだ。」
ファイアの広がった瞳が黒く光る。だが、その言葉とは裏腹にファイアの体は震え、立っているのも苦しそうである。
(…限界じゃ。ファイアも、この状況も限界じゃ。)
ケイは左腕に力を入れた。
(じゃが、この命が途絶えるまでは、それまではここを動かん。)
取り囲む獣人たちは2人を見て笑い声をあげる。
「あれほど純粋じゃったケイがここまで男に取り込まれるとはな。それも、人間の男に。」
「ケイの目を見てみ。泣けるで。自分の命をかけてまであの男を守る気でおるんじゃからな。」
「残念じゃったな。お前がいくら戦おうともあの男は死ぬんじゃから。今、この場でな。」
ケイは飛んでくる獣人たちの罵言に対する怒りを全て左腕に込める。獣人たちはニヤニヤと笑いながらジリジリと2人に詰め寄ってきた。
「これ以上近づくな。」
ケイが左腕を振り回し威嚇するが、獣人たちは余裕の表情を崩さない。
「ケイ、どけ。俺が全員ブッタ切ってやる。」
ファイアが顔を起こし前に出ようとしたその時、急に、獣人たちの輪が後方からとけ始めた。
「ご無沙汰じゃのう。ケイと人間の甘ちゃん。」
ニヤリと笑うタントタンが2人の前に姿を現した。タントタンはファイアの姿をもう一度見ると笑いながらこう言う。
「やはりケイと一緒におったのはお前じゃったか。あの時、殺したと思っとったんじゃがな。只の甘ちゃんかと思いきや強い命は持っとるみたいじゃな。」
タントタンの顔を見たファイアの目が一層開いた。
「返せ…。」
ファイアの声にタントタンは「なんじゃ」と首をかしげる。
「返せ。遠征軍の命を…、ハークシーの命を返せ。」
タントタンは瞬きもせずにククッと笑う。
「ええことを教えてやろう。この世のものはなあ、一度命を失ったらそこまでなんじゃ。…そんなに返してほしいなら、お前をあの世に送って死んだ兵士たちと再会させてやるで。」
タントタンの言葉にファイアの黒い瞳が一瞬で燃えた。震える手でグッと剣を握り直したファイアは、言葉にならない叫び声をあげながらケイの制止を振り切りタントタンに突撃する。
タントタンは後ろに立っていたジプに、「俺がやる」と言うと獣の爪を鳴らした。




