表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地の竜、空の虎  作者: 遠縄勝
飛翼編
49/96

第15話 回帰2

 ライが再び襲ってくるのか。それとも別の獣人か。ファイアの鼓動は一気に早くなる。しかし、石壁の陰から姿を現したのはファイアにとって予想外の人物だった。


「さすがに勘だけは鋭いようだな、獣のお嬢ちゃん。」


 鋭く細い目。揺れる竹筒。そして力み無く剣を握り立つフーガンがそこにはいた。


「フーガンさん。」


 ファイアは思わずその名を叫んだ。何せハークシーで別れてから数日。その生死が全く分からなかった男が生きて姿を現したのだ。


 名前を呼ばれたフーガンの視点がファイアを捉えた。その瞳が微かに揺れる。


「…お前さん。そうか、お前…。」


 ファイアにはフーガンが少し笑ったように見えた。しかし、その表情もすぐに消えた。


「生きて再会出来たことを喜ぶのはもう少し後だ、ファイア。」


 そして鋭い目がケイのほうを向く。


「この獣を倒した後でな。」


「は…?」


 フーガンの言葉にファイアはついていけなかった。


 「ちょっと待ってください」というファイアの言葉が届く前にフーガンの足が動いた。ケイとの間合いを一瞬で詰めたかと思うと、剣を素早く振りぬいた。


 これにはさすがのケイも避けるのが精一杯だった。ケイは体勢を崩し転がる。フーガンはこれを見逃さず、剣を振り下ろした。攻め続けるフーガンに、避けるケイ。この構図がしばらくファイアの目の前で展開された。


(おい、おい。ちょっと待てよ。なんだこれは。)


「フーガンさん、落ち着いてください。どうしてケイに攻撃するんですか。」


 ファイアの声もフーガンの耳には届いていないようだった。フーガンの殺気は凄まじくケイに反撃の糸口さえ掴ませない。


「フーガンさん。」


 その時、ついにフーガンの剣がケイの体をかすめた。ケイが小さく悲鳴をあげる。


「フーガンさん、俺の話を聞けええええ。」


 ファイアが自身でも驚くほどの声に、フーガンの動きが止まった。殺気が渦巻いた瞳だけがファイアのほうを向く。


「なんだお前さん。」


「どうしてケイを殺そうとするんですか。」


「俺とミニカは昨日こいつに殺されかけた。だから斬る。それ以外の理由はないが。」


(昨日どころか、ハークシーからケイは俺と行動を共にしてきたんだ。そんなはずは…。)


 そこでファイアの頭の中にライがパッと浮かんだ。


 ケイと瓜二つの顔。そして似たマント。ライしか考えられない。


「フーガンさん、それはケイじゃない。フーガンさんを襲ったのはケイに似た獣人です。」


 ファイアの必死の言葉にもフーガンの表情は変わらない。


「なぜお前さんがそう断言できる。お前さんはいつのまにこいつらの側になったんだ。」


 フーガンはうずくまっているケイの顎を剣先で持ち上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ