第15話 回帰1
ライの来襲を受けた日の夜。二人は交代で周囲を警戒しながら夜を明かしたが、再びライが現れることは無かった。
(やっぱり、ケイにあんなに圧倒的に負けた直後に襲ってきやしないか。)
ファイアは山々を照らしていく朝日を見ながら、昨日のケイとライの戦いを思い出していた。そして、最後に見せたライの表情。明らかに自分に対して憎しみの感情をぶつけてきたあの顔がファイアの頭の中に強く残っていた。
「ファイア、体は大丈夫か。」
背後からケイの眠たそうな声が聞こえてきた。どうやら朝日の眩しい光で起こされたようだ。
傷が完治していないファイアに対し、ケイは自分1人で見張りをすると主張したがファイアはこれを退けた。ケイにばかり負担を掛けることはできない。
「ああ、何も無かったぞ。俺の体も、ライの事も。」
ファイアは大丈夫だといわんばかりに元気のよい声で答えた。ケイはファイアの言葉に少し微笑んだ後、包まっていたマントから手足を伸ばした。
その様子を見ていたファイア。
「そういえばライも今ケイが被っているものと似たようなマントを持っていたな。」
「ああ、マントか。…そうじゃな。」
ケイはマントをさすると、そのまま口を閉じた。
(この話題には触れてほしくないのか。)
ファイアは大きく息を吐く。
「よし、今日はフセ山脈を越えよう。獣人族がどこまで進撃しているか分からない以上、一刻も早くハークグランに戻らなくてはいけない。」
ファイアの心の中には獣人族の侵攻はフセ山脈で止まっているのではないかという気持ちがあった。ハークグランに残っている王国軍の本隊が終戦の地であるザジロ盆地の突破を簡単に許すわけがない。そういう期待がファイアには強かった。
(一刻もはやくフセ山脈より東へ。)
「ならば、山を降りて街道をゆこう。そっちのほうが早いじゃろ。」
ケイの提案にファイアは息をのみ込みながら頷いた。
*****
ファイアとケイは焼きつくされた村を歩いていた。
(本当にひどい。ひどすぎるぞ。)
ファイアは辺りを見回しながら奥歯を噛みしめる。一方のケイは表情を変えることなく歩いていた。ただその歩く速度が早足になっている。二人の距離が少し空いた。
急にケイが立ち止まる。そして、黒くなった石壁のほうを睨んだ。
「誰じゃ。そこにおるのは。」
ケイが左腕をゆらりと揺らした。




