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地の竜、空の虎  作者: 遠縄勝
咆哮編
36/96

第11話 選択2

 数十人の住民の前に二人の兵士が槍を握って立つ。じわじわと近づいてくる1人の獣人に対して、二人の兵士の腕は震えている。


「ミラ。や、やるしかないのか。」


 男の兵士が震える声で女の兵士に話しかける。


「どうやらそのようね、ハスラン。」


 ミラはハスランの震える手に視線を送りながら、自身の槍を強く握った。


(今のハスランは当てにならない。私がこの獣人を倒して、住民たちを脱出させなくちゃ…。)


 ミラは大きく息を吐いた。自分の背中には数十人の命がかかっている。ミラの眉間が険しくなる。


 獣人がニヤリと笑った。そして、体勢を屈めたと思うと、次の瞬間には二人の方向へ向かって駆け出してきた。


「きたあああ。ぎゃあああ。」


 ハスランが慌てふためく。


(っつ。来た。)


 ミラの目が大きく開いた。


(3、2、1…、うおお。)


 ミラが槍を横に大きく振った。獣人が上に避ける。そして、着地後、切り返し腕を振る。


(うっ。)


 ミラは辛うじて避けた。金色の髪が大きく揺れる。


(あっ…。)


 槍がミラの手から離れてカランと地面に落ちる。


(万事休す…。)


 ミラが目を閉じる。


「……。」


(…?私、斬られていない?)


 ミラはうっすらと目を開けた。すると、微かな視界の中に獣人に斬りかかった黒髪の男が見えた。獣人は不意を突かれたのか体勢を崩す。


「槍で突けええ。」


 黒髪の男がミラに向かって叫ぶ。


 ミラはハッとして、落ちていた槍を拾い獣人の胸を突いた。


「ぐっ…。」


 獣人がうめき声をあげる。突きが甘かったのか獣人をすぐに絶命させるには至らない。


 黒髪の男はすぐに剣を振った。獣人がついに倒れた。後ろで怯えていた住民たちから歓声の声があがる。


「“殺し”をしたのは初めてなのか。」


 黒髪の男がミラに話かけた。


(…私の手、すごく震えてる。)


 ミラは自分の手を見た後、すぐに男の顔を見る。その男は鋭い目をしているが、表情は軟らかいように見えた。


「まあいい。今は住民の避難が先だ。」


「え、あ、はい。」


「あの男はこっちに来てから怯えっぱなしだからな。もう少しの間、君が頑張ってくれ。」


 ハスランのほうを指しながら、男がいう。


「え、なんでそんな事を…。」


 ミラの驚いた表情を見て、男は口が過ぎたと独り言を呟くとしゃがみこんだミラを立たせた。


「さあ、早く住民の避難を続けろ。いつ獣人が現れるか分からんぞ。」


 男がそう言った直後に、どこからか大きな笑い声が聞こえてきた。


「いやー、お前人間にしちゃ強いな。面白いものを見せてもらったわ。」


「ケイが連れてきた人間の男とは違うな、お前。」


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