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地の竜、空の虎  作者: 遠縄勝
序編
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第1話 竜の国2

 ファイアとミラが貧しい格好をした女の子についての推察を繰り広げていると、槍の広場の隅のほうから元気な男の声が聞こえてきた。


「南市場の二人のほうが先に終わっていたか。こちらシェン、パジェ組も今日の巡回終了だ。」


「遅かったじゃないか。何かあったのか。」


 ファイアの問いかけに「いやー。」と再び口を開いた男がシェン・ランダー。20歳。大きな口に大きな目。とにかく体のパーツが大きい。また、声も大きいのがこのシェンという男である。


「今日は西門の周辺がいつも以上に人が多くてさ。なんでも竜神参りにいく人が集まってて。巡回に時間がかかってしまった。」


 そう話すシェンの後ろで口一文字で立っている男がパジェ・バレッジ。21歳。細身でファイア以上に身長があるが基本的に無口な男である。


「この時期に竜神参りか。確かにまだ涼しいし“孤高の山”まで行くのにはいい季節なのかもな。」


 ファイアは納得した表情をみせながらタギ地区の王国軍駐屯地に歩きだした。


*****


 ここでハーク王国について少し触れておきたい。ハーク王国は獣人族との争いの英雄であるハーク・マルクが島一体を領土として築いた国である。獣人族との争いの際にご加護してくれたという竜を王国の守護神として祭っており、その竜が住んでいるとされるのが“孤高の山”と呼ばれる山である。首都ハークグランの西、フセ山脈のさらに西にある街ハークシーのさらに西にそびえるのが“孤高の山”である。


 この山に一生のうち一度はお祈りにいくという竜神参りはハーク王国の人々にとって大切な儀式なのである。ただハークグランから歩いて片道半月かかり、そのためお参りに行ったきり無事に帰ってくることの出来ない人も毎年のようにでている。それでも今日まで竜神参りが途絶えることなく続いていることから、ハーク王国における竜神の存在感がよくわかる。


「そういえば俺はまだ竜神参り行ったことないな。」


 駐屯所に向かう道中にシェンがナハハと笑いながら口を開く。それを聞いてファイアも「俺もだ。」とうなずく。


「私もまだですね。二人ともハークグラン出身だし、私はハークマウン出身だし、フセ山脈より東の生まれの者は中々…、ですね。そう言えばパジェさんはハークシーの出身でしたよね。竜神参りは?」


 ミラがパジェの顔を覗き込む。話をふられたパジェはチラッと3人の方をみると伏し目がちに低い声で「幼い頃に父と行ったことがある」と言ったきり黙りこんだ。


(そう言えばあんまりパジェが自分のこと話てるとこ聞いたことないな。)


(まあ、元々無口な男だからな)


 ファイアは心の中でそう思いながら、未だ黙り込んでいるパジェの顔をもう一度見た。


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