第8話 夜明け3
「暗くなってきたな。」
フーガンが小窓の外を見た。ファイアがランプに火をつける。暗くなった部屋の中はゆらゆら揺れるランプの火でオレンジ色に照らされた。
遊撃隊の3人とケイは数時間をかけて王国軍と獣人の衝突を止める方法を考え出していた。1つの小隊と1人の獣人族の女の子。出来ることは限られていて少ない。しかし、なんとかしなくてはハーク王国の体制が崩れかねない事態である。
獣人族の世界がどのようになっているのか。何故、ケイは争いを止めたいのか。詳しい事情についてケイは多くの事を語らなかった。しかし、いくつかの事についてケイは3人に話した。
「…要はそのタントタンというやつが好戦的で今回の事態の中心なんだな。」
フーガンがケイに問う。
「ああ。我々は基本的に普段は群れん。しかし、民族をまとめる中心的な者がおるんじゃ。頭と呼ばれるんじゃがな。その頭がタントタンじゃ。」
ケイは続けた。
「族の中で強い男が皆に認められて頭になる。タントタンは最近頭になったばかりの若い男じゃ。」
「では、そのタントタンがハーク王国との戦いをやめると言い出せば、獣人族は争いから引くというの?」
ミニカの問いにケイは頷く。
「まず間違いないじゃろうな。さっき我々は群れんといったが、頭を中心にまとまりがあるのも我々じゃ。矛盾を感じるかもしれんがな。」
「頭であるタントタンが争いをやめると言い出せば我が民族がこれ以上動くことは無い。」
これまで話を聞いていたファイアが口を開く。
「フーガンさん、先ほど話したあの作戦でいきましょう。そのタントタンを止めれさえすれば。」
フーガンはファイアの顔を見る。
「そうだな。大役だが任せたぞ。」
ファイアは力強く「はい」と返事をした。
「よし、では夜明け前に始動するぞ。少しだが休憩をとって明日に備えよう。」
フーガンが話し合いをしめた。
*****
フーガンとミニカは先に仮眠についた。ケイは床の上で白いマントの中に包まり丸くなっている。
「おいケイ。床の上じゃなくて布団で寝ればいいっていつも言っているだろ。」
ファイアの言葉にケイはマントから手だけを出し面倒くさそうに答えた。
「私らはこんな風に寝るのが普通で一番落ち着くんじゃ。お前たちと一緒にするな。」
「そうか。」
ファイアは短く答えると、しみじみとした口調でケイに話かけた。
「しかし、あの時、お前が俺に着いてきてくれるとは思わなかったよ。」
「何をいっとるんじゃ。私は負けた身。お前に囚われの身じゃわ。」
ファイアは不思議そうな顔をした。
「囚われの身?こんなに自由な囚われの身がいるかよ。」
ケイはさらに小さく丸まった。
「う、うるさいわ。明日は早いんじゃ。ファイアも早く休め。」
「そうだな。おやすみケイ。」
ファイアも布団に入った。月と星が綺麗な孤高の山のふもとの森。明日の夜明け前から遊撃隊とケイの勝負の1日が始まる。そんな緊張感を背負いながらファイアは眠りに入った。




