第6話 布告2
ハーク・ジー3世に獣人族による孤高の山駐屯所への襲撃事件が報告された翌日、ハークグランの槍の広場には多くの民衆が集まっていた。その様子にシェンの目は丸くなる。
「尋常じゃない数の人がいるな。俺たちが警備に駆り出されるのも納得の人出だわ。」
シェンの隣に立っていたミラも疲れた表情で頷く。
「私、ハークマウンの出身なんで人ごみに慣れないんですよね。軽く酔いそうです。」
パジェも覇気のない表情をしながらざわついている民衆を眺めている。
「僕もだよ。ハークグランに来てしばらく経つけど一向に慣れない。しかし、今日の国王様の布告って何だろうね。」
「何でしょうね。国王様がここまで出てくるなんて滅多にないですからねえ。」
そうする間にも人はぞくぞくと集まってくる。
しばらくすると槍をもった王国軍の隊列が槍の広場に入ってきた。その隊列の中に馬に乗ったハーク・ジー3世やエムダ、アクオなどの姿が見える。
「来たみたいだな。さて国王様が何を喋られるか。」
王国軍の隊列を見てシェンが姿勢を直す。
ハーク・ジー3世はハーク・マルク像の横に作られた急造の台の上に登り、辺りをゆっくりと見渡した。
「今日はよく集まってくれた。私がハーク王国の王ハーク・ジーだ。」
とても大きな声だ。それまでざわついていた民衆は静かにハーク・ジー3世の言葉を聞く。
「我がハーク王国は今日まで栄光と繁栄の歴史を歩んできた。」
ハーク・ジー3世はハーク・マルク像を指す。
「それは…このハーク・マルクが武勇と知略をもって獣人族を滅ぼした150年前から続いている。」
「しかし、しかしだ。その獣人族が再び現れた。卑しくしぶとい獣人族がハークシーを襲ってきたというのだ。しかも、竜神の住む聖なる山“孤高の山”で奴らは好き勝手しているという。」
ハーク・ジー3世の話を聞いていた民衆がざわついてきた。それを遮断するようにハーク・ジー3世は持っていた槍で台を叩き再び大きな声で喋り出す。
「奴らは我々人間を食う。そんな者どもをこのままには出来ない。」
「私たちは孤高の山を取り戻す。そして、醜く、恐ろしい獣人族をもう一度絶滅させる。」
「王国軍を孤高の山へ派兵する。今現在も獣人族の恐怖に震えるハークシーの市民たちを救いだし、このハーク王国の平和を、人類の栄光を守り続ける。」
「ハーク王国の平和と栄光のため、一緒に戦おう皆。」
そう言い終わると再びハーク・ジー3世は槍で台を叩いた。すると、民衆の一部から「おおお。」という叫び声が聞こえた。それは瞬く間に全体に広がり、槍の広場に集まった民衆は拳をつきあげ威勢の良い声をあげる。槍の広場が揺れた。




