第4話 孤高の山2
フーガンとミニカはハークシーの市街地に入った。
「しかし何度来てもこの街はハークグランと同じ国の街に見えないな。」
フーガンは周囲を見渡しながらハークシーの住人が聞いたら激怒しそうな台詞を吐く。ミニカは静かに「そうね。」と相槌をうつ。
首都ハークグランは整然とした街並みに裕福層が住んでいるのに対し、2人のいるハークシーは貧しい者が多く住んでいた。そのためかハーク王国内で最も治安の悪い街であり、王国への反乱分子が生まれることも多かった。そのため、フーガンとミニカは遊撃隊の仕事でハークシーに何度も足を運んでおり、この街の地理にもすっかり詳しくなっていた。
二人はハークシー官府の前に着いた。官府前の門には胸にハークシー兵の証である青い竜のエンブレムをつけた二人の兵士が警備として立っていた。この警備兵にハークグランからの使者であると伝えると中の小さな小部屋に通された。フーガンがトルーマン長官との面会を希望すると「少し待ってろ。」と言い警備兵は部屋を出て行った。
「この状況だと直接トルーマン長官に説明するほうが早いはずだ。獣人族が再び現れたと聞きゃ、どんな企みを働いてるか知らんが改心してくれるかもしれん。」
「ええ。でも正攻法すぎて失敗した時が怖いけどね。」
「その時はその時だ。この王国が再び獣人族との大きな争いに直面するかも知れん。なりふり構ってられん。」
***
その時、トルーマン長官は官府内の長官室で1人考え事をしていた。すると部下の兵が扉をノックする音が聞こえた。
「開いとるぞ。なんだ。」
「トルーマン長官。ハークグランより二名の使者が来ております。何でも長官と面会したいと。」
「ほう。もしやその二人というのは竹筒をぶら下げた男と栗色の髪をした女か。」
「何故それを。見られていたのですか。」
「ちょっとな。分かった。連れてこい。」
部下が部屋を出ていくのを見てトルーマンは薄くなった頭をかく。
(遊撃隊を送ってくるとは。中央のやつらがワシに脅しをかけてきたか。)
しばらくすると再び扉をノックする音がし、フーガンとミニカが長官室に入ってきた。
「失礼します。トルーマン長官にお話があり伺いに来ました。」
「なんじゃ。ワシを消すために来たんじゃないのか。まあ、ハーク王国の裏舞台で暗躍してきたお前たちが堂々と官府内でそんな事はせんか。」
トルーマン長官は1人で笑うと「で、話とは。」と続けた。フーガンが「はい。」と小さく返事をすると一歩前へ出た。
「獣人が再び現れました。正確に言うと私たちがハークシーへ向かう道中、フセ山脈の森にて目撃しました。…当初はトルーマン長官が王国に対し反抗の意志有りという指示を受けこちらに参りましたが。」
「獣人が再び現れた…か。それでお前たちは上の指示を半場無視する形で私に直接伝えに来たのか。」
「ええ。獣人族が現れた今、ハーク王国は内部で分裂している時ではないと思います。トルーマン長官が心の中で画策しているものは存じあげませんが、改心して頂けないかと。」
「それなら頑固な年寄りのワシを消して中央に忠実な者を長官に仕立てあげれば良いではないか。」
「…トルーマン長官の力がハーク王国にはまだまだ必要です。どうか。」
フーガンは頭を下げた。ミニカも一歩前に出て頭を下げる。その時だった。長官室に1人の兵士が荒々しくはいってきた。
「長官、孤高の山の警備隊が何者かの集団に襲われ只今交戦中。兵の中に死傷者も出ています。」




