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地の竜、空の虎  作者: 遠縄勝
序編
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第3話 白い女3

 ケイの表情にファイアは少し戸惑ったが、動揺を出さまいと表情と語気を強める。


「大嘘つきの国王様だと。それはハーク・ジー3世様のことか。我が国の王を侮辱するのか。」


「侮辱じゃない。本当の事を言ったまでじゃわ。」


 ムッとした表情を見せるファイアを無視してケイは話を続けた。


「その王にこう伝えて欲しい。“これ以上いらん事したら我が民族がお前たちを滅ぼすぞ”と。」


「なっ、何を馬鹿な事を言っているお前。ハーク王国を滅ぼすだと。それに我が民族と言うことはお前の仲間がまだいるってことか。」


「お前、お前って私にはケイというちゃんとした名前があるんじゃけどな。」


「今はそんなことどうでもよい。俺の質問に答えろ。」


 ファイアは怒鳴るように言い放ち、剣を抜いた。その様子を見てもケイは余裕のある表情を浮かべている。


「ふっ、脅しのつもりか。そんなもんじゃ私は殺せんで。質問に答えろと言ってたな。お前たちがどんな教育を受けてきたか知らんが、私たちは何百年にも渡って繁栄してきた由緒ある民族じゃ。もちろん私の仲間も多くいる。」


 ケイはそう言い放ち左腕を白いマントから出した。お前が襲いかかってくるなら殺すと言わんばかりに。そしてその左腕をファイアに向けた。鋭い爪が光る。


「頼まれごと、聞いてくれるな。」


(さっきから手足の震えが止まらない。なんだこの状況。どうすれば正解なんだよ。)


(そもそも分からないことが多すぎる。獣人族はどこに住んでいるんだ。ケイというこの女はなぜここにいる。…そもそもケイのいう“いらん事”ってなんだよ。)


 ファイアは構えていた剣を降ろすと静かな口調でケイに問いかける。


「なあ、お前の、ケイの言う“いらん事”ってなんだよ。話に情報が少なすぎて俺には分からないことだらけだ。」


「お前の国王に言えば分かることじゃ。」


 そう言うとケイはファイアに向かって飛びかかった。剣を降ろして話をしようとしていたファイアは反応が遅れる。ケイの左手の爪がファイアの左腕を斬る。


「っ。何をする。」


 ファイアの左腕には切り傷ができ、血が地面に落ちる。


「動きが遅いな。今の約束を忘れそうになったら、その傷を思い出して私の頼まれごとをちゃんと果たすんじゃで。」


「お前たちの国王が止まらなければ私たちも武力行使に出るしかない。戦争は私たちも望んでないんじゃからな。」


 そう言うとケイはフセ山脈の方へ走り去っていった。


 ファイアは傷を受けた左腕をかばいながら石碑に持たれて座り込んだ。緊張でかたくなっていた体の力が一気に抜ける。しかし、心臓の鼓動は早いままだ。


(早くこの事を報告しなければ…。しかし、遊撃隊に入って衝撃的なことばかりだ。獣人族の末裔に会い、そして重大な警告を受け。)


 ファイアは目の前に広がる草原を見た。


(ケイと名乗る女、去り際に戦争とか言っていたな。)


(この王国が戦火にあうことだけは避けたい。決してあの女が信用できるわけではないが…ハーク・ジー3世様への伝言の件もカイブ隊長に意見を伺おう。)


 ファイアはケイにつけられた左腕の傷に持ち合わせていた布を巻き立ちあがった。そしてハークグランに再び馬を走らせはじめた。


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