握った白旗
お腹、減ったなぁ。
乾燥した唇から、微かな息だけが漏れる。
寄りかかったシャッターの錆が、自分の背中をちくちくと刺す。
何してるのだろう、自分は。
都に憧れ、親の反対を押しきって、上京してきて早5年、高校生時代にアルバイトで貯めたお金と、大学に入ってから、コツコツ働いて貯めたお金で、なんとかつないできたが、遂に貯蓄も底をついた。
高校生時代は、初めて自分でお金を稼いだという達成感で、友人たちと毎日、嬉々として親からの独立の夢を語らっていたわけだが、今考えると、自分たちの幼稚さに恥ずかしくなる。
アパートを管理人に追い出されて数日、両親の帰ってこいという手紙を無視し続けた数年間、自分の愚かさにはほとほと呆れていた。
今、世界で起こっていることにさえ、関心を持たなかった己への罰なのだろうか、と、柄にもなく考える。
視界には、自分と同じように、行き場を失った人があちこちで見られた。
その中には、倒れて動かない人もいる。
疲れたなぁ。
ひゅっと口から息を吐くと、その場にうずくまった。
束の間、強い風が吹き、とばされてきたゴミや枯れ葉が、通りにいる人に体当たりする。
とばされてきた新聞紙を拾い上げると、ぼやけた視界で文字の羅列を追った。
━━第三次世界大戦、いよいよ開戦か
遂に始まるのかと、ぼんやり考えながら、目を閉じた。
このまま楽に死ねたら、と、最期まで愚かな自分を自嘲しながら、意識を手放した。