料理と笑顔
本当に時間が取れずに申し訳ございません。これにて完結とさせていただきます。
そして遂に、王妃様のカグヤ・リョクリュウ王妃様の誕生日当日がやって来た。長男のフート・リョクリュウ王子、次男のクルト・リョクリュウ王子、次女のミコト・リョクリュウ王女の3人はそれぞれ自身のパーティー用のプレゼントを用意していた。クルト王子とミコト王女のお二方は花のかんむりを手渡し、フート王子は顔を赤らめつつ指輪を差し出していた。王様のイザール・リョクリュウ殿下はルリ・リョクリュウ王女とエミヤ・リョクリュウ王子のお子様2人を手に持って、カグヤ王妃様にお似合いそうな、綺麗なドレスを差し出していた。そのドレスの差し出しを担当しているのは、使用人であるティミア・アルリッアであった。
ティミアは深く頭を下げて、そのまま王妃様へと差し出す。そのドレスはカグヤ様に向けられた物だとは思うけれども、ナイスバディなボディであるティミアが持っていると何とも……皮肉にしか思えないのだけれども。
「受け取って貰えないか、我が愛する妻よ」
「えぇ、喜んで」
そう言いつつ、そのドレスを嬉しそうに自分の身体に合わせてサイズチェックを行った後、殿下の持つルリ王女とエミヤ王子の頭をゆっくりと撫でる王妃様。これでとある1人の人物を除いては、カグヤ王妃様の誕生日プレゼントを渡す事が出来たと言えるだろう。
最後は問題の……ヒスイ王女。
「さぁ、ヒスイ王女様。そろそろ出番でよろしいでしょうか?」
僕はそう言い、ヒスイ王女様を出るように促す。物陰から出るように促す。ヒスイ王女様の手には、彼女が今日に向けてなんとか作り上げる事に成功したケーキである。とは言っても、ヒスイ王女様だけの力で作ったのではなく、土台の作成は僕が作ったのだけれども。
ヒスイ王女様がやったのは、ケーキ用の飾りつけである。クリームを塗った後、苺を置くのがヒスイ王女の役割だったんだけれども。
「でも、これは……」
彼女が持っているのは、そうして作り上げたケーキ。塗られているクリームにはムラがあり、苺は所々傾いていたり、ケーキのクリームに埋め込んでしまっている物もあるのだけれども。
正直言って、これを買うかと言われれば少し躊躇してしまうようなケーキだけれども。
「大丈夫。それを作った事をちゃんと伝えれば良いんですよ? そうすれば王妃様も喜んでくれますよ。(多分だけど)」
「そ、そうかな……」
「言ったでしょ? 料理に一番必要なのは、心だって」
そのケーキは確かに売られているケーキからしたら失敗作のケーキかもしれないけれども、確かにそのケーキは、ヒスイ王女様が一生懸命相手の事を思って作ったそのケーキは王妃様からしたら何物にもかえがたいケーキだと思う。
「さぁ、行ってください」
「う、うん……」
そうしてヒスイ王女様はゆっくりとケーキを持って、カグヤ王妃様へと向かって行く。
(キツネ、ちゃんと言っていた通りやっておけよ。ちゃんと食事も与えて置いたんだから)
(わかってるよーだ)
キツネはそう言って、所定の位置に着く。そしてキツネは何らかの術を唱え始める。キツネには場を盛り上げる術を頼んでおいたけれども、それがどのような形での場を盛り上げる術なのかは知らない。ただ、こんなおめでたい場で破滅の呪文でもやろうと言う事はないだろう。……ないはずだ。
「さて、どうなる事やら……」
そう思っていると、ヒスイ王女様がカグヤ王妃様の前に立つ。
「お母様……」
「あらあら、まぁ~……! 美味しそうなケーキよね~! もしかして、ヒスイちゃんが作ってくれたの~?」
「うん」
それを聞いた途端、カグヤ様の顔が満面の笑みに代わる。
「嬉しいわぁ。お母さん、てっきりカグヤから嫌われてるって思っていたし。いつもつまらなそうに見ているだけだし……」
「ち、違う。私、感情が伝わりづらいし……お母さんに不快な気持ちにさせると思ったから。で、でもお母さんに何か気持ちを伝えたいと思ったから。一応、ケーキを使ってお母さんに気持ちを伝えようって思って……それで……」
どうにかしてお母さんに気持ちを伝えようとしている、お母さん想いの1人の少女の姿がそこにはあった。そしてそのお母さん想いの少女の気持ちはちゃんと届いたようである。カグヤ王妃様は涙を流しながら、ヒスイ王女様を抱きついていた。
「良いのよ、そんなに考え込まなくてもいいのよ、あなたは! まだまだ子供なのだから。とっても嬉しいプレゼントをありがとう、私の可愛いヒスイちゃん♪」
「……お母さん」
どうやら2人とも、気持ちが伝わって良くなったみたいだね。
そんな事を思っていると、空から桜の花びらが降ってくる。桜の季節じゃないし、これがキツネの能力なのか。
「綺麗ねぇ……」
そんな王妃様の言葉に、皆が微笑ましい顔になる。
けれども僕が本当に心に残ったのは、いつも無表情そうな彼女の出した笑顔であった。




