手配と教習
なかなか時間が取れなくて、すいません。続きを書かせていただきます。
はっきり言って全く持って初心者であるヒスイ・リョクリュウ王女が、カグヤ様の誕生日の間に急成長を遂げて、とっても豪華な食事の調理を施せるほど成長出来るとは思っていない。精々、出来るとしたら魚の煮つけが1人で出来るようになれば良いと言う所だろうか。とは言っても、それは多分、無理だろう。
出来るとすれば、最低はサラダ。最高は魚の煮つけと言った所だろう。少なくとも誕生日までに、ケーキやローストチキンと言った誕生日らしい食べ物は作れないだろう。だとしたら、どこか別の部分でサプライズを演出するべきだろう。
「……まぁ、なんで僕がこんな事をやっているのかと言われれば、なんでなんだろうなー」
僕はあまり、面倒事には関わらないようにしている。しているのにも関わらず、ヒスイ・リョクリュウ王女にどうしてここまで関わっているのだろうか?
「ニンゲンー! 今日は稲荷ねー!」
そう言って、ニコヤカな顔で本日の料理を要求して来るキツネ。……うん、こいつのせいだと思いたい。
そうだ……サプライズと言えばこいつ以上に適したのは居ないじゃないか。
人を騙すのに長けたキツネ。しかも、こいつは5本の狐だし、それなりの事は出来るんじゃないだろうか? それならば、こいつの化かす技術をどうにかして応用できさえすれば、誕生日にサプライズを作れるんじゃないだろうか?
「……なぁ、キツネ。もしも、もしもの話だ」
「んー? なーに、ニンゲン? と言うか、早く料理を作りやがれー」
「……もしも、今以上に美味しい料理を作ったならば、1階だけその力を借りる事は出来ないか?」
それを聞いたキツネは、うーんと考え込むようにして思案している。もしも、これが出会った当初くらいに聞いていたらどうなっていたんだろうか? 多分、恐らくだけれども、有無を言わさずに飛びかかられて終いだっただろう。それに比べたら、餌付けによって随分と仲良くなったと言うべきか。
「……美味しさによる?」
「それは大変だなー、おい」
美味しく無かったら手伝わないとか、とっても大変なんだけれども。それだったらどれくらいの量を指定してくれると嬉しいんだが、美味しさだとかなり難しいんだけれども。
「……まぁ、いつもよりは時間をかけて仕込みをやるから、美味しくは出来るんだけれども」
「なら、良いけれども?」
「じゃあ、指示が出たらお願いするよ。後、これは料理だから」
僕はそう言って、キツネに料理を渡しておく。キツネは「わーい!」と言って、その料理を食べ始める。さて、キツネはこれで良いんだけれども、後はヒスイ王女の方である。
☆
台所にて、僕とヒスイ・リョクリュウ王女は料理を始める。
「まずは1つ1つの食材の特徴を理解しよう。
この野菜は普通の野菜と違って、北の方の地域にてやっているから、栄養分が少ない。逆にこっちは南の方過ぎるから味が濃いから注意だ。魔法の源である魔素は北の方ほど薄くなって、南に行くほど濃くなるのは……」
「……知ってる。それは世界の基礎だから。と言うか、なんであなたがこんな所に居るんですか?」
そう言いつつ、メモを取っているヒスイ・リョクリュウ王女。勉強熱心な所が、良いし。
「とまぁ、とりあえず手伝わせてくれ。あの王女の誕生日に貢献出来たならば、僕の評価も上がるし」
「……分かりました」
「よろしい。とりあえず、これから始めようか」
そう言って、野菜と包丁を渡すように誘導する。怪訝な顔をするが、ヒスイ王女が恐る恐る切り始める。
ストン。
野菜が包丁によって綺麗に切られた。ただそれだけの光景だが、それが料理が苦手なヒスイ王女には感動的な光景だったらしく。感無量と言えるほどうれしい顔でこっちを振り向くが、すぐさま恥ずかしくなって野菜に向き合う。
そう、それで良いんだよ、と背中から見つつ、僕は彼女に懇切丁寧に料理を教えていた。




