料理と教育
何気に時間が取れなくて、ここまで伸ばしてしまい、すいませんでした。続きを書かせていただきます。
次の日、厨房にてヒスイ・リョクリュウ王女はまたしても料理をしていた。
「……こう」
危なかっしい手つきのまま、ゆっくりと包丁を持った手を大きく振り上げて、そのまま食材を切ろうとしている。そうやって切ろうとしているのが非常に危ないので、僕は急いでその手を掴んでいた。
「―――――――おいおい。そんな大きく振り上げたら危ないだろうが」
「……マイク・カミキさん?」
と、包丁を持った危ない状態にて、彼女はこっちを焦点の定まらないような、無表情の瞳にてこちらを見つめていた。
「―――――――料理において手つきが危ういと、怪我する危険性が高くなる。そう言うのは、使用人にしろ家族にしろ何にせよ、きちんとした料理の仕方を学んでから、そして料理を決めてから調理すべきだ」
彼女は多分、近々誕生日を迎える母親のために料理をしていたのだ。恐らくは、多分。けれども、正しい料理方法を教わらなかったんだと思う。
思えば、ちょっと冷たい雰囲気のする子供だった。近寄りがたいと言うか、子供らしさに欠けるような子供だった。恐らく自分で出来る事は、自分でやってきたんだと思う。それ故に彼女は料理を自分の持っている知識だけで作ろうとしたのだろう。
しかし、料理と言うのは教えて貰う人が居た方が上達が速い。特にこう言った手つきすら危ういのならば。
「……全く。どちらにせよ、なんでそんな手つきでどうして調理なんてやる事を決めたんだか」
あんな腕で、料理をプレゼントに考えるだなんてお母さんも迷惑だと思う。料理は心と言うけれども、その真心が感じられないのだったらそれはただの嫌がらせに相違ないと思うんだけれども。
「……私は精神的に子供と違います」
「だろうな。本当にそうだよな。なんか、そう言う感じがしているし」
「……兄が母親の誕生日に、何か1つずつ贈り物をしようと言った」
クルト王子とミコト王女がティミアに頼んで花飾りを頼んでいたのは、それが理由だろうね。そして彼女も作ろうとしたのだろう。
「……歌を歌っても、多分、子供っぽく無くてお母さんは喜ばないと思う。絵とかも描いても、それでも子供っぽく無くてお母さんは喜ばない」
「それで、料理だったら顔も見なくて良いし、お母さんに感謝の気持ちでも伝えられるとでも?」
「……うん」
なんともまぁ、察しが良すぎる子だろう。
自分の性格が子供っぽくないと気付いていて、そしてそれが母親には多分、喜ばれないだろうなと思ってしまい、それでも母親に対して何らかの形で想いを伝えられたら良いなと思っている。
「……良し。分かった。手伝おう」
「えっ?」
「勘違いするなよ。目の前で危ない橋を渡られるくらいならば、こっちで安全な橋を渡らせるために誘導する。そんな感じの事だ」
「……良く分からない。けど、ありがとう」
僕はそう言って、彼女に料理の基本、そして作りたい料理を聞いてレシピを作って行く。
飲み込みが早い生徒なため、すぐに料理の基本を覚えてしまった。やっぱりこの子は天才的だわ。けれども、天才だとしても、それだけでは多分、駄目なのだ。
誰かが―――――――その子に教えてやらなければいけない。そうしないと、立ち止まって、そして崩れ落ちてしまう。
この子は今、自分が母親からどう思われているかと言う事を客観的に知ってもなお、一生懸命、母親のために何かをしようと努力している。その事が、僕はとっても美しい光景に思えた。
だから、助けてあげよう。
これは平凡を求めるはずの、平和な生活を送りたいはずの僕が、そんな一生懸命な子供に送る、ただのお節介である。




