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王宮のお仕事~三食・ベッド・キツネつき~  作者: アッキ@瓶の蓋。


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王城のキツネ

 ファンタジー要素がありますが、後はファンタジーでは難しいので文学にやっておきますが、他に何か合致したのがありましたらよろしくお願いいたします。

 あなたは仕事に何を求めますか?



 『やりがい』? 『給料』? 『良好な人間関係』? 『環境』?



 僕、マイク・カミキが仕事に求める物、それは『平和』だ。

 穏やかに、静かに、ただただ平和に。

 激しい喜びも楽しみもなく、代わりに深い悲しみも絶望もないようなそんな世界。そう言った命の危険も何もない、穏やかな、他人に枯れていると思われるような、そんな老人のような植物のような生活。

 それが僕が仕事に求める事だった。



 僕の仕事は使用人だった。黒髪黒目、左目の下に黒子があって、少し太り気味な事がコンプレックスとなりつつある22歳の、ごく一般的な成人男性である。僕の仕事は給金を貰って、その仕事の清掃、調理、育児などの家事を行う。それが僕の仕事だった。平民で、力も才能もないような僕がやる仕事だが、この職業は女性ばかりの職業である。男性は数えるくらいしかない。何故、この職業を選んだかと同い年の男子達は不思議そうに質問してくる。



 その質問に答える前に、この世界について話しておきたいと思う。

 この世界、『ドラゴニア』は剣と魔法の血生臭い世界。未だに僕が暮らす国や他の国では、多くの人間が剣で斬り、魔法を扱う。僕はそう言った戦いと言うのが嫌いなのだ。元々力も才能もなかったし。だからこそ、僕は戦わない道を選んだと言う事である。ただ、それだけの話である。



 僕は使用人として沢山の家で、ただ静かに仕事を着実に行っていた。ただただ波乱を起こさないように、ただただ静かに平和に暮らしてきた。



 そしてただただ、平和を求めて来た僕の前に。厄介事が舞い込んでいた。



「マイク! マイク! 早く美味しい食事を用意して欲しいのですー!」



 目の前に居るのは、白い巫女服を着た金髪の少女が居た。こちらを興味深そうに覗く深紅色の瞳と、5本のふさふさのキツネの尻尾と髪と同じ色の狐耳。僕よりも数十センチも低そうな彼女は、僕の背中に張り付いて食事を用意するよう急かしていた。



 そんな姿を見て、僕は戸惑っていた。



 僕の国にはこんなことわざがあるからだ。

 『キツネ、彼らは人をからかう事を常に考える生物だ。尻尾が2本以上ある場合は騙される事を考えよ。尻尾が5本以上ある事は恨みを買わないように注意しろ。そして尻尾が9本ある時は諦めよ』。

 つまり、僕の国にとって”キツネ”とは関わり合いにならない方が良い生物である。



 そんなキツネに僕は懐かれ、憑りつかれてしまっていた。



 何故、こんな事になってしまったのか。その事について説明しよう。



 それは数日前の出来事、僕が新しい職場、ライトウイング国の王宮に仕事が決まった初日の出来事である。



 この世界、『ドラゴニア』には5つの国がある。『ドラゴニア』は空中から見ると大きな竜のように見えており、それぞれ竜の右翼、左翼、尻尾、頭、身体のような形をしている。

 最も東に位置する緑豊かな自然を持つ、竜の右翼のような形をしている国、『ライトウイング』。最も西に位置する国に大きな湖がいくつも点在する豊かな水をたたえた、竜の左翼のような形をしている国、『レフトウイング』。最も南に位置する火山地帯の島群の国で、全体の形が竜の尻尾のような形をしている『ドラゴテイル』。最も北に位置する国土全体が雪に覆われた、竜の頭のような形をしている国、『ヘッドラゴ』。そしてその4つの真ん中に位置する山と谷だらけの最も面積が広い、竜の身体のような形をしている国、『ドラゴ・パーツ』。そして僕は『ライトウイング』にて使用人ギルドなる物に入っている。



 ギルドとは同じような職種や志を持った集団組織郡の事であり、冒険者達が集まったギルドを『冒険者ギルド』、魔法使い達が集まったギルドを『魔法使いギルド』、商人達が集まったギルドを『商人ギルド』と呼ぶのだが、僕が所属している『使用人ギルド』は名の通り使用人達が集まったギルドである。



 そこそこギルド内でも知名度が付いて来て、慕ってくれる後輩達を育てたりと、なかなかに平和で静かな暮らしを生活していた。その日を迎えるまで僕は中流貴族、ギューリー家にて使用人をやらせて貰ったのだが、



「……な、なんでいきなり国に、この国の国王様達のリョクリュウ一族様に仕えなければならないんでしょうか?」



 と、僕、マイク・カミキは髭を生やした40代の男性、この使用人ギルドの頭を担うギルド長にそう尋ねた。



 『ドラゴニア』にある5つの国にそれぞれその国を治める5つの国王の一族がある。

 『ライトウイング』を治めるリョクリュウ一族。

 『レフトウイング』を治めるスイリュウ一族。

 『ドラゴテイル』を治めるカリュウ一族。

 『ヘッドラゴ』を治めるハクリュウ一族。

 『ドラゴ・パーツ』を治めるテンリュウ一族。



 国を治める彼らは当然騒動の中心人物的存在であり、僕が一番苦手としている、僕が一番関わり合いになりたくない一族である。求めるハードルも高いし、騒動も多いだろうし、僕はどんなに給金が高くてもその5つの一族だけは関わらないようにしたかったんだけれども……。それはギルド長にもそれなりに分かってくれていると思ったんだけれども。



「すまん、マイケル。どうしても王家に使用人を送らないといけなかったんである。そして動かせるのがお前だけだったんだ、マイケル」



「ギルド長、僕の名前はマイクです。マイク・カミキ。断じてそんなどこぞの歌手のようなマイケルなんて名前ではありません」



「そうか、理解したよ。マイケル。しかし、お前も分かっているだろう。それがどんなに名誉で、後衛至極な事なのかと言う事を。大人しく受けて置く事に同意したまえ」



「ですから、マイク・カミキですと何度言えば……まぁ、もう良いんですが。僕はリョクリュウ一族のような国の統治者さんには関わり合いになりたくないと何度言えば……。しかもこんなに急に?」



「仕方ないんだ、マイケル。世間とは何事も無情な物なんだよ。急なのも向こうの事情なのだよ。とにかく明日からリョクリュウ一族の使用人として頑張って貰いたい」



 有無を言わさないその言葉に、僕は従うしかなかったのである。

 後輩や同僚に別れの挨拶をする事は出来なかった。何故ならその日のうちにリョクリュウ一族が住む翡翠城(ひすいじょう)へと行くために準備をしなければならなかったからである。出来れば出て行くまでに一度会っておきたかったんだが、会う時間がないのだからしょうがなかった。

 その日のうちに、僕は仕方なく翡翠城へと向かっていた。まぁ、仕事を受けるからには仕方がない。こうなったら、面倒事には一切関わらないように過ごす方が良いだろう。



 慌てず、騒がず、激しい喜びも楽しさもない代わりに、深い悲しみも絶望もない、動物と言うよりかは植物に近いような、静かで、平和な日常。それこそが僕の目指す物なのだから。



「マイク・カミキ殿ですか。では、明日からここで働いて貰いますので、よろしくお願いいたしますね」



 と、ギルド長と同じくらいの歳の国に仕える、黒髪白目の大臣さんがそう言って来た。僕は頷きながら、案内される道に沿って城内の様子を確認していく。こうやって城内の様子を確認し、汚れやすい場所と厄介事が来た時に隠れる場所を用意しておくのだ。



 そして僕は1つの部屋へと案内される。『使用人室-4』、恐らくも何も、使用人として僕に与えられた個室であろう。中を見て見ると1人で住むにしてはそれなりの広さ、設備がある。個人用食用冷蔵室も用意されており、中にはちゃんと新鮮な食材が入っている。



(これだと美味しい料理も自炊出来そうだ。最初は王城暮らしはどうかなと思っていたんだが三食、ベッド、そして高給ならば、後は迷惑事が無ければ完璧だろう)



「じゃあ、明日から使用人として、よろしくお願いいたしますね。明日には多分、国王一家をお見えすると思いますので」



「あぁ、はい。よろしくお願いします」



 では、と言って大臣さんは帰って行きました。



「ふー……」



 扉を閉めて誰も居ない事を確認して、息を吐いて僕はベッドに横になる。

 今日は疲れたー。まぁ、明日から頑張るとしますか。



「わー! 新しい人だー! 今度の人は止めないで欲しいなー!」



 と、いきなり可愛らしい少女の声が聞こえて僕の腹の上に誰かが載って来る。

 可笑しいな。さっき見た時は誰も居なかったし、一応ここに案内してくれた大臣さんが出るのを見て誰も居ない事を確認してから扉を閉めたのだが。誰だろう?



 そう思いつつ、僕は視線を上に向ける。



 僕よりも数十センチも低そうな白い巫女服を着た金髪の少女が居た。こちらを興味深そうに覗く深紅色の瞳と、5本のふさふさのキツネの尻尾と髪と同じ色の狐耳。



「今回はもっと持ってくれると嬉しいなー。ちゃんと喋り相手になってねー、”ニンゲン”」



 そして僕は悟ったのだ。



 急に使用人ギルドから使用人が呼ばれた事。4号室と言う不吉な部屋番号。そして……こちらを見る際に何とも言えない顔をしていた大臣さん。とどめにこの5本の狐の尻尾を生やした少女。



 これこそが、急遽この城に使用人として僕が呼ばれた理由だと言う事を。

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