不条理 in バースデイ
今日、俺は27歳の誕生日を迎えた。これでフリーターは5年目になる。
両親には音楽プロデューサーになると伝えたものの、無論その気はない。仕送りをもらうための口実というやつだ。
誕生日。年を経るごとに価値をすり減らし、今となっては化石同然となっていたはずだったが、今回は少し様子が違っていた。
『ケンスケへ 音楽頑張ってね 母より』
いつもの仕送りに加えて、今の内容の置き手紙と、先日発売されたばかりのヘッドホンが添えられていた。
少しばかり胸が痛むのを感じながらも、いつも通りの日常を始める。
(まあ、そのうち頑張るよ)
プレゼントのヘッドホンを装備して、ミリタリー映画の閲覧。さすがに最先端だけあって、戦場の雰囲気を最高に盛り上げてくれる。
鉄と鉄がぶつかり合う音。はちきれんばかりの高音を発しながら、機械は駆動する。
血と肉が擦れ合い、引きちぎられていく。
そして進軍は敵の本部にまで達し、敵の中枢部に風穴を空ける。
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『本日の午後2時頃、T市のマンションの一室で男性の変死体が発見されました』
『警察によりますと、男性が着けていたヘッドホンにドリルが仕込まれており、それが男性の脳を損傷したことが直接の死因であると推測されています』