議論『神はいるのか?』 3つの弱弱しい根拠
議論のはじまり。
鑑は桐恵と対峙した。
少し離れて塔子が立ち、二人を見て微笑んでいる。
唐突に桐恵と議論しろと言われ、鑑は緊張していた。
先ほどの会話でも、桐恵の賢さは垣間見えていたから。
「あははは。
そんなに緊張しなくていいよ~」
最初に口を開いたのは桐恵だった。
「えっ?」
「私達は信仰を共にする仲間じゃないか!
私は、伊達君と建設的な議論をしようと思ってるんだよ。
建設的な議論というのはね。
お互いが意見を交換する事によって、
より正解に近づくための、
優しい議論なんだ。
そこには真実を得ようとする二人がいるだけで、
争い事なんて何にもないんだよ♪」
「そ、そうなんだ!」
「君の方こそ、
私を泣かせるかもなんて言ってたけど、
そういう人を泣かせるような、
酷い事は言わないで欲しい。
……不安だよ」
「ご、ごめん……」
「私は伊達君と仲良くしようと思ってるんだよ……」
「そうだったのか……」
(な、なんだ!とても良い子じゃないか!
さっきの脅しは冗談みたいなもんなんだな!!)
「ねえ、伊達君?
私はいつも不思議に思ってるんだよ。
神様なんて本当にいるのかな?って。
私の立場で、
そんなこと考えては
いけないのだろうけど……。
せっかくだから、
創始者の伊達君から、
なぜ『神はいるのか』を教えてもらおうと、
議題にさせてもらったんだよ」
「なるほどな。
わかった。
なんでも聞いてくれよ!!」
「まず、伊達君が『神様がいる』って言える、
その根拠を教えて欲しいなぁ」
「俺、神様と会った事あるからな」
「どこで?」
鑑は当時、
自分が作った設定を思い出しながら喋った。
「『神の夢』という超絶特殊空間で会ったわ。
夢の中なんだけど現実以上に現実的。
意識がはっきりすんだよね。
『覚醒』ってやつかな?
やっぱ神様の前だと、
人間の本来ある力を取り戻すぐらい元気になっちゃうんだよね。
で、本当は『神様の姿は見えない』んだが、
その空間でのみ見ることができる。
『見させていただける』と言うべきかな。
で、そこで神様と色々話して、
『神の教え』を授かった。
話すと言っても神様の言葉は『立体言語』だから、
もう脳に直接入ってくる感じ?」
鑑はここまで話して不安になった。
(……俺、適当すぎだろ!?)
「ふふ。伊達君は神様と会ったから、
神様を信じているんだね。
当然だね。
神様と『本当に』会ったのなら、
神様はいるんだろう。
なぜなら、存在しないものと出会う事は、
できないだろうから」
「だよねー」
「でも、それだと伊達君以外の人にとっては根拠にならないよね……。
私、神様に会ってないもの。
私も会ってみたいな~♪」
「た、確かに」
「私も神様に会わせてくれる?」
「そ、それは無理だよ」
「なんで?」
「やっぱ神様、忙しいからさ。
もう毎日頑張って働いてますから。
宇宙とか大宇宙のために?もうすげーの。
そこら中で無の空間から、
ゆらぎ発生させて宇宙作ってるから」
「全知全能なのに忙しいの?
全知全能なら、
仕事なんて一瞬で終わせることだって、
できるんじゃないのかなあ?」
「あ、そうそう全知全能ね!
ま、確かに全知全能なんだけど。
いや、忙しいっつーかさ?
さすがにほら、個人のために神様とか気軽に呼び出せるほど、
気楽な関係じゃないじゃん?俺と神様って」
「あはは。ま、そりゃそうだねぇ。
じゃあ、私達が会わないで、
神様の存在を信じられるような証拠はないの?」
「もちろんあるよ!」
「それは何?」
「そりゃ神様が作ったこの世界だよね。
大きな海。青い空。白い雲。
雄大な森林。
俺らが住む青い惑星。
太陽に月。無数の星。銀河。
そんな世界でポツリと俺達がいて、
動物達と暮らしている。
調和の取れた美しい世界だろ。
この複雑な世界が自然にできるわけがない。
高度に知的な存在が介在した何よりの証拠!
そう。この世界そのものが、
神様が起こした奇跡なんだよ……(フッ」
「ふふふ。なるほどねぇ。
『美しい世界』だから
神様がいるってことね……。
君の話はわかったよ。
神様がいるって根拠もね」
「あ、もう終わり?
いやー、すげー建設的議論だったわー。
改めて人に話すと論点とか、
色んな事がわかるね!
俺達、仲良くなれそうだなー!」
鑑は屈託のない笑顔を桐恵に向け、
桐恵の表情を見た。
(うっ……)
鑑は桐恵の表情を見て、悪寒が走った。
桐恵はニタァ……と、
いやらしく笑っていた。
それは飢えた肉食動物が、
親とはぐれ、無邪気に虫と戯れている、
子供のうさぎを見つけた時のような。
残酷な行為とともに欲望を満たす時の、
暗い欲望を宿した目の光をしていた。
(一体何を考えれば、
こんな恐ろしい表情になるんだよぉ!?)
鑑は酷く怯えた。
「ふむふむ……。
あれ?でも、おかしいなぁ~~~~?」
演技がかった、実にわざとらしい声だった。