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VS『パワーストーン教』決着

「赤川さん、本当の『パワーストーン』を持って来て下さい!」

「へい!ただいま用意しやす!」


台車を引いて、数人の信者が壇上に上がった。

台車の上には白い布がかかっており、中身は見えない。

なんとも怪しげな様子。


「皆様も真実の『パワー』に触れて目覚めてください!!」


布を取り除くと……中にはギラギラと光る『黄金の延べ棒』が大量に積まれていた。


「!?」

「えっ何これ……?」


一般的な『金の延べ棒』は約15キロの重さを持つ。

1グラムあたり3000円とすれば一本4500万円になる。

それが大量に積まれている……これは『無限幸福完全世界教』の潤沢な資金力を示していた。

財力。これこそがこの世界で最も強い力なのだ。


「おい!これは反則だろ!?そりゃ金に力があるのは誰でも知ってるよ!」

「ふふふふふ。素晴らしい輝きですね。

皆様は黄金がどうやって『かみさま』によって作られたかご存知ですか?」


「な、何の話だ!?」


「黄金はかみさまが力を込めた石です。

金の延べ棒を持った時、誰だって不思議に思うでしょう?

想像以上に重い、と……」


鑑は思った。


(まず一般人は持つ事ないんだよなぁ……)



「その感覚は正しいのです。

なぜならば、通常このような重いものは地球にはできません。

お星様とお星様が出会い、そして結婚してできたのです!」


「は?」


教祖は意味がわからず呆れ顔をした。

それでも塔子は話を続けた。


「金はそもそも宇宙由来なのですよ。

地球から遠く離れたどこかで、星と星が衝突してできたのです。

そうして私達人類が生まれる遥か以前の遠い昔に……。

黄金が流れ星としてやって来て、

地球と混ざり合ったのです。

私達はその過去の宇宙の偉大な営みの一部を……こうして目の前にしているのです。

それはまさに宇宙的奇跡ではないですか?」


「うっ……」


教祖は言葉に詰まった。

俗物の象徴とも言える『金の延べ棒』が……

なにやら神聖なものに見えてきてしまったから。


「古来から人類はこの美しい輝きを見て、

魂が揺さぶられたのです。

多くの宗教で装飾品として使用され、

権力者はこぞって追い求めました。

そして、現代でもその価値は失われておりません。

黄金には非常な高値がついております。

1グラムで何千円もします。たったの1グラムですよ?

たったの1かけらに数千円です。ご飯がいっぱい食べられますよ?

不思議な話だと思いませんか?

黄金自体に工業的な価値はそれほどはありません。

もちろん、純粋にある程度の価値はあります。

しかしこれが金でない、同じ使い方ができる別の鉱物なら……。

1グラム数千円はしないでしょう。

では、なぜこのような価値が認められているのでしょうか。

それが語られる場合、単純な理由ではありません。

しかし私はたった一言で済ませられます。

それは『信仰の力』です」


塔子の演説に、その場にいる人間が全員聞き入っていた。

たった二人を除いて。


「黄金が価値を持つのは、

多くの人々が価値を信じているからです。

ただそれだけです。

黄金の価値は現実的でなくてはならない投資家ですら信じています。

社会における権力ある方々も信じています。

例え社会が不安定になり、戦争が起こり、国家が転覆しようとも。

黄金は価値を失わない。そう信じています。

黄金の価格が落ちたときはあくまで短期的なものであって、

長期的視野で見れば黄金は価値を失わない。と。

黄金の価値はこれまで1000年以上続いたように、

これから未来永劫続くものだと。

そう思って金を購入するのです。

この考えが非現実的だと思いますか?

しかし皆がそれを信じればそれは実現します。

本当の事になるのです。実際にそれは起こっている事なのですよ!

事実金は21世紀の今でも、数千円で取引されているのですから。

皆が価値を信じたものは価値があるものなのです。

そうです!黄金は人間の『信仰の対象』なのです!

黄金は崇拝されているのです!だから世界を動かす力を持っているのです!!」


『パワーストーン教』の人間達が、静かに頷き始めた。

塔子の話を認めたのだ。


「皆様。私は質問させていただきます。

えー……。

この『金の延べ棒』……いえ、『真実のパワーストーン』。

欲しいですか?」


当然だが、欲しい欲しいと声があがった。

もしかしたら貰えるかもと言う期待からか、その声には熱が篭る。

いつのまにかパワーストーン教祖も「えっくれるの?」というもの欲しそうな表情で、

塔子を見ていた。


「わかりました!いいでしょう!

この『真実のパワーストーン』を手に入れられる場所を教えてあげます。

いえ、連れて行ってあげますよ。これが私の皆様へのプレゼントです!

皆様お集まり下さい!」


『パワーストーン教』の信者達は喜んで塔子の下に集まった。

全員集まった所で、外に出て、

待機していた大型バスに乗せられた。

何台も何台もバスが到着し、信者を乗せては発進していく……。


バスは船着場につき、

そこで彼らは大きな船に詰め込まれた。



南米。



長い長い旅の後……彼らが到着したのは南米のある国だった。

それが具体的にどこなのかは彼らにはわからない。

しかし、そんな事はどうでもいい。

信者達が目覚めた『無限幸福完全世界教』に内包された、

『真実のパワーストーン教』の教義。そしてその実行こそが重要なのである。


信者達は採掘機を持って、全力を持って金を見つける。

それがこれからの彼らの仕事だ。それだけを行う。

彼らは熱心だった。

南米の鉱山。隔離された土地で、やる事はそれしかない。

昼夜問わず働き、金を見つけた。


彼らに対して賃金を払うべきか?

不要である。

なぜならば、これは『労働ではない』から。

これは宗教活動。修行だ。

悟りを得る修行僧が滝を浴びるように。

彼らは神聖不可侵な『パワーストーン』を得て世界の真実を知るために、

黄金を採掘する。

まさに修行そのものだ。

ただ対象が金であり、まるで俗世間における労働であるかのように見えるから、

『勘違い』されやすいだけだ。


それに、見つけた黄金は全て見つけた人のものになるのだ。

ただし半分は『無限幸福完全世界教』に自発的に寄付する事になっている。





ある日、塔子は現地の写真を見た。

『パワーストーン教』の人々が浅黒い肌になって、

一心不乱で働いている姿。

そして金が含まれている鉱物を満面の笑顔で握り締める姿が映っていた。

塔子は大いに喜んだ。



「南米支部に人手が足りなかったのでちょうどよかったですね!

人の夢をかなえるのって、本当に気持ちいいです。

皆様の幸せが私の幸せなのです!」









鑑はぼうっと窓の外を見つめ、

思考とツッコミを放棄した。



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