食堂?
人の気配がして目が覚める
「あれ?ハクア君起きてるじゃん」
僕が訝しげにすると名波は言いにくそうに岸さんがルームメイトなのだと告げてきた
任務的には喜ばしいのだが・・・
「あの人なんであんな僕のこと敵視してくんの?」
名波は軽く考えて
「基本的に身内以外にはあんなだよ、あの人は」
つまりは、いきなりやってきた転校生は病原菌のように思ってるのか
「なるほどね」
そして、ふと
「そういえば、用があるから来たんだよな?」
と尋ねた
そうしたら、名波は腕時計を見てしまったという顔をした
「早く食堂に行かなきゃ」
そう言うと、僕の腕を取って走り出した
「え、え?」
困惑した僕をよそに彼はどんどん進んでいった
「えっとぉ?」
急に名波がスピードを落とした
と、思ったらいい臭いがすることに気づく
「もうちょっとで食堂に着くからね」
名波がこちらに笑いかけながら言う
「ショクドウ・・・って?」
疑問を口にした途端名波は宇宙人を見るかのような目で僕を見てきた
「食堂を知らないの・・・?」
僕は首を縦に振る
暫くの沈黙が落ちる
「・・・ぃ・・・してる」
名波が静寂を破る
「え?」
が、あまりに声が小さくて聞き取れなかった
「絶対、人生損してきたよそれ!!」
と、思ったら今度はあまりに大きかったので耳がキンキンする
「ちょっと行くのが遅かったから人気なのは残ってないかもだけど、でも全部美味しいから」
また、名波は僕の腕を取って歩みを速める
僕の頭ははてなで埋め尽くされているのでただそれに従って行くこと数分
「着いたよ」
そう言われて意識を覚醒させるとそこには男子生徒と食べ物で埋まっている広いホールがあった
「これがショクドウ?」
名波は深く頷く
まるでどっかのホテルのバイキングだ
「さて、僕たちも並ぼうか」
名波について進んでいく
どうやら本当にシステム的にはバイキングと同じらしい
ただし、メインディッシュだけはオーダー制
「おっ・・・ラッキー」
赤毛の彼は肉食獣のように目を爛々と輝かしている
「亮さん寿司2つ!!」
亮さんと呼ばれて四十代半ばと思われる男性が厨房から顔を出す
「隼君じゃないか、久し振りだね」
と言いながら名波の頭をぐしゅぐしゃに掻き回す
「やめてくださいよぉ」
そんなたわいもないやり取りをぼーっとして見ていたら亮さんが視線に気づいたようで
「あ、すまないね、注目はなんだい?」
頬を人指し指でぽりぽり掻きながら聞いてきた
「えっ、えっとぉ・・・」
「あっ、亮さんこの人は桐札ハクア君っていって、新しい生徒会のメンバーなんです」
健康的な歯を見せ、まぶしいくらいの笑みを浮かべ、
「そうなのかい」
と言う彼はとてもいい人に見える
しかし、一瞬亮さんの目に僕を訝る気配が混じっていた
・・・ような気がしたが、気にしすぎなのかもしれない
「はじめまして、桐札ハクアです」
握手を求めて手を出すと彼も握り返してくれた
「俺は、学園長と知り合いの料理人で渡貫亮だ」
たまに厨房に遊びに来てるんだと名波が説明してくれた
学園長の知り合いでたまにここに来るってことはやっぱりさっきの訝る目は気のせいじゃなかったか
「ハクア君、今亮さんに寿司頼んだんだけど大丈夫だったかな?」
「あぁ、うん・・・」
僕は歯切れ悪く言う
「どうかした、ハクア君?」
なんで気になってしまったのかのだろう・・・
「そのハクア君じゃなくてハクアって呼んでくれるかな?」
呼び方なんてどうでもいいことじゃないか・・・
「え、え?もちろんだよ!」
名波が嬉しそうにする様子を見ていたら急に名波が目を大きく見開いた
「ハクアく、じゃなかったハクア今笑って・・・」
それを聞いて初めて顔の筋肉が緩んでいたことに気づいた
「き、気のせいだ!」
この学校に来て1日とたっていないはずなのに・・・
僕は感じたことのない温かさに困惑する
「えー、今のは絶対笑ってたって」
とまぁ、僕が笑った笑ってないのやり取りをしていたら大袈裟な咳払いが聞こえた
「あっ、亮さんごめんなさい」
どうやら寿司が出来たらしい
「じゃあハクア行こっか」
亮さんに感謝を伝え、僕らは席を探しにいった
そのあとは適当に話しながら夕飯を食べて僕は部屋に戻った
テスト期間中に私は何をやっているのでしょうか・・・