転校生~side Toya~
「あ?」
俺は今自分の部屋に戻ってきてベッドに鞄を放り投げようとした
しかし、その上にあるはずのないものを見て変な格好で止まる
「なんで転校生がいんだよ」
自分の領域に何かがいることに非常に苛立つ
その声で起きたのかハクアは目を少し開いた
そして意外なことに俺に笑いかけた
さらにどういうことか俺に抱きついてきた
「あ、あ゛?」
俺は戸惑いの声をあげる
あまりの困惑にハクアを突き放すのも忘れる
「まもる・・・」
しかし、そう彼が俺に呼びかけるように言うと、顔から笑みを消した
さっきの笑顔が嘘かのような悲痛に顔を歪めている
「おま・・・」
俺が話そうとしたのに気づかなかったのか彼は寝ぼけた声で話しはじめた
「一緒に逃げようって言ったら・・・」
俺は黙る
「いや、まもるには心配ばっかりかけてるのにこんなこと言ったらダメだね」
無理やり笑おうとする彼を見て、何故か俺の胸が痛みを覚えた
そして、頭をゆっくりなではじめてやった
「もう、子供扱いしないでよぉ・・・」
照れくさそうに、でも同時に嬉しそうに彼は困った顔をした
マモルとは誰なのだろうという疑問を抱きつつ俺は彼の頭をなで続けた
そうすると、ハクアは寝ぼけていただけのようで寝息が聞こえてきた
「俺はいったい何してんだか・・・」
いくら弱っている人に優しくする性分でもこんな得体の知れないやつにこんなことするなんて・・・
「俺ってバカなのかも」
と、ひとり落ち込んでいると呼び鈴がなった
「なんなんだよ今日は!?」
呼び鈴がなったのは高等部に入って初めてではないだろうか
「イレギュラーが多すぎるだろ・・・」
と、呆れていると、また呼び鈴が鳴った
乱暴に扉を開くと驚いた顔の隼がいた
「あれ、会長?」
どうやら用があったのは俺ではないらしい
ってことは・・・
「転校生か?」
聞くと、彼は過剰に頭を縦にふりまくった
「寝てるから起こして連れてけ」
そう言って立ち去ろうとすると隼が不思議そうにして
「あ、あれ、ど、どこに行くんですか?」
と聞いてきた
「七瀬のとこだ」
そうして、また何か言われる前に足早にその場を去った
今回は十夜目線の回でした