寮へ
一方ハクアたちがどうしていたかというと―
暫く無言だったがそれに痺れを切らしたらしい名波君が
「あ、あの!!」
とこちらを真顔で見てきた
「な、なんですか?」
反射的に答える
彼は少し戸惑いを見せてから頭を下げた
「え?」
いきなりのできごとに呆然とする僕
「そ、その初対面なのに見苦しいところ見せたから・・・」
叱られていたことを言っているのだろうとあたりをつけた
しかし、僕が謝られても・・・
「あっ、えっと・・・」
僕が困っていると何を勘違いしたか彼はさらに不安になったようで目が潤んできている
「あっ、別に気にしてませんよ?」
咄嗟に言ったが、なんで僕はわざわざ・・・
「ホントですか?」
彼は一気に顔を明るくする
・・・最初の印象とかなり違う彼を見て若干戸惑う
僕の少しの戸惑いをよそに彼は嬉しそうに続ける
「僕見た目がこうでしょ?だからあんまり友達いなくて、よかったら仲良くしてくれるかな?」
友達、か
僕には友達を作る環境すらなかったな・・・
と、そんなこと考えてる場合じゃなかった
っていうかまさか自分にこんな発想ができる思考回路があるのに驚いた
「えっと、僕も友達が出来なかったらって思うと不安だったからむしろこちらからよろしくしたいくらいだよ」
学校の生徒会メンバーだったら組織に直結してる可能性も高いし、とは言わないが
「あっ」
名波くんが窓の外を見て声をあげる
それにつられて僕も見ると、どうやら移動用の車が来たらしい
「ご、ごめん、急ごっか」
彼は相変わらずおどおどしながら言った
それに対して僕は頷いた
その後の道のりはたわいのない話を続けた
なんと綾瀬さんは僕と同じクラスらしいということもわかった
今のところ一番怪しい綾瀬さんと親しくなるのは後々調査が楽だろう
「あっ、もう着くよ」
その言葉の通り、前方の方に北校舎よりさらに大きい建物が見えてきた
真ん中の時計台を中心に左右対称な白を基調としている
「えっとね、あれが学生寮こと西校舎、右側が女子寮で左側が男子寮だよ」
と、名波君の説明が終わったところで車が止まった
車から降りると名波君に少し待っているように言われた
そうして周りを見渡して待っていると実に空気が美味しいことにはたと気付いた
「植物がたくさん植えられてるからかな?」
そんな一人言を漏らしていると
「桐札君、部屋空いてるところ聞いてきたよ」
と言いながら名波君が鍵を指でクルクル回して来た
「ありがとう」
「まっ、とりあえず案内するよ」
彼は人懐っこい笑みで言ってきた
「えーっと、ここだね」
鍵の番号札と部屋のナンバープレートを確認して彼が言った
さっきからかなりの部屋の数を通りすぎていたが、明らかにここだけなんか豪華だ
「なんか、他と違うね」
思わず感想を漏らす
「うん、そうだね、なんでだろ?」
どうやら彼は寮に住んでいないらしい
「じゃあ僕は一旦生徒会に戻るけど、どうする?」
「あぁ、今日は疲れたから休んでいいかな?」
実はここ最近働きっぱなしだったのだ
「そか、じゃあまたあとで夕食にね」
と言って彼は早足で行ってしまった
夕食という単語を聞いてから寮での生活の仕方に色々疑問が浮上してきたけど気にしないことにした
部屋に入ると扉同様内装も豪華だった
かなり金がかかっている
とまぁ見渡しているとキングサイズのベッドが目に入った
それによって眠気が増幅したように感じた
僕は誘われるようにベッドにダイブした
さて・・・
隼がハクアのこと桐札君ってよぶとめっさ違和感だ・・・
次会ったときに修正されるからそれまでの我慢だけど><