誰のお家ですか?
「これは驚いた。女の子は紋章なんて興味ないと思っていたよ」
まあ、わざわざその理由は話しませんけど、ジュリアンさん、もといジュリアン様が侯爵の関わりである事は間違いでしょう。
だってリンデンやトリフュートと言う侯爵家の名を出しても驚くことはなかったもの。
そうこうしている内に馬車が止まったようです。
外を見ると、町中を抜けていてどう見てもホテルらしき場所ではありませんでした。
窓の外に目をやると大きな門の前のようですが、大き過ぎて全容は掴めません。
門番が門をちょうど開け終えたようで、馬車が中へ入っていきます。
「ここは? ホテルに連れて行ってくれるのではないの?」
私は疑問を投げ掛ける。
「ホテルみたいなもんさ、今夜1日泊めてもらうのだから。
でも町中のホテルよりは安全だと思うよ」
「その言い方だと、あなたのお家でもなさそうね」
「まあね」
いたずらっ子のように笑うジュリアン様。
門から随分走ってようやく馬車が車止めに止まった。
それを見計らった様にジュリアン様がドアを開け馬車からおりました。
「ちょっと待っていて、話をつけてくるから」
そう言うと御者に私と待つように言い、建物の中に入って行きました。
門からの距離を考えてもとても広い敷地をお持ちのようです。
その上馬車が止まっている前に立つこの建物。
大きさの想像が私の頭では出来そうにありません。
しばらくして、ジュリアン様は一人の男性を伴い戻って来られました。
「お待たせ、話はついたよ。
この男はこの家を仕切っている侍従長のラリーだ」
紹介された男性は馬車から降りた私に頭を下げた。
「いらっしゃいませ ラリーと申します」
とても柔らかい物腰なのに、何か緊張感の様なものがその身から漂っている気がします。
「突然のご訪問失礼いたします、ステラと申します。
私も状況が分かっていないのですが… ご迷惑をお掛けします」
なんだか、分からない挨拶をする。
「いえ、ジュリアン様のわがままはいつもの事ですので、お気になさらず。
主人が部屋でお待ちですので、中へどうぞ」
全く気にした風もなく、笑顔で答えてくれる。
「は、はい」
私は慌ててラリーさんの後をついていきました。
私の横を歩くジュリアン様はリラックスし過ぎな気もするくらい自然体だ。
自分の家ではないって、言ってましたよね?
不思議な人だ。
一見軽薄そうだけど、決して人を不快にはしない妙な魅力がある。
知ってしまえば、どこから見ても貴族の令息にしか見えないし、しかもこの顔だし。
信じても大丈夫だよね?
これからどうなる事やら。




