素敵な朝食
「そうか、伯爵家は使用人の方がまともで上等な人間のようだ」
と公爵様は嫌みとも皮肉とも分からない事を仰います。
ラリーさんがメイド達と朝食の準備を整え終えてから一言。
「旦那様朝食の準備が整いましたので、一旦お食事に専念してはどうでしょう。
伯爵家の奇人たちの話では食事も不味くなりましょう」
ラリーさんもご主人に負けないくらいの皮肉をおっしゃいますね。
「そうだな、ステラ食事にしよう」
「はい。頂きます」
焼きたてのホカホカのパンの匂いは何とも幸せです。
ついつい顔が綻んでしまいます。
それにとろとろフワフワのプレーンオムレツに、カリカリベーコン。
パリパリフレッシュなサラダ。
たっぷりの野菜とソーセージの入ったコンソメスープ。
それに数種類のチーズとハム、ピクルスとオリーブにフルーツ。
どれも出来立て、数時間置きっぱなしで冷めきってパサパサ、カピカピに乾いてしまっているなんて悲しい食事ではない事がうれしい。
伯爵家でも食事はちゃんと頂いていましたよ。
メニューも他の方達と変わらない物を出されていたけれど、夕食以外はジータ様達が終わってから、使用人達と食べる事も多かったわ。
特に朝食はいつも皆が終わってから一人で冷めた物をただ口に掻き込まなければならなかった。
早く片付けをしないと、怒られるから。
もう何ヵ月もこんな素敵な朝食を食べてなかったもの。
そしてゆっくり味わって食べても、誰も文句を言わない。
最高だわ…
私はこの幸せな朝食をじっくり味わった。
朝食を、全て平らげて、ゆっくり紅茶味わいます。
「はぁー 美味しかった。
ご馳走さまでございました。
え? サンジュスト公爵様?
あ、あのどうかされましたか?
私、何か粗相でも」
前に座っている公爵様は頬杖をついて微笑みながら私を見ていた。
「いいや、何もないよ。
あなたがあまりにも幸せそうに食べているものだから、ついつい見てしまっていてね。
何だか私まで幸せな気分だよ」
と仰います。
「す、すいません。
こんなにゆっくり朝食を食べたのが久しぶりだったのです。
それも出来立てでとても美味しいものですから、つい…」
私は伯爵家では朝食の時間はいつも義母や義姉の給支をさせられていた事。
そして3人が、食べ終わった後に1人で冷めきった食事を食べていた事を説明しました。
「ジータ様はわざわざ私の分も同じテーブルに並べさせて、私が食べれない状態を楽しんでいるようでした。
ある時、侍従長が給支をステラ様に任せるのであれば食事は別にご用意しますと提案してくれたのですが、許可が出ませんでした。
後から私が使用人達と調理場で食事をすると暖かい食事を用意してくれますから、それはさせたくなかったのでしょうね」
と説明しましたが何だか自分で言ってて落ち込みそうになりました。
「すみません、またこのような気分の悪い話をしてしまいました」
私は朝食前も公爵様を不快にしてしまっていたのを思い出し、謝罪しました。
「いや、あなたは何も悪くないし、あなたが謝る事ではないよ。
あなたは被害者なのだから、この数ヵ月随分ひどい扱いだった事はよく分かったから、当分この邸でゆっくりするといい。
あなたの体も心も十分に元気になってから、これからの事を相談しよう」
そう言ってくださいました。
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