第9話 なんだかんだ言ってさ、たいちゃんって私といるとたのしそうだよね。
8月、夏休みに入って最初の土曜、俺とアゲハは花火を買いにホームセンターへと来ていた。
「みてみてたいちゃん、この打ち上げ花火面白そうだよ」
「え、何どうした?」
声のする方へ、目を向けるとアゲハがぶち上げとか書いてある、いかつい大きさの花火を指さしていた。
見ると、夜空を照らす夏の最高の思い出と書いてあった。
いやいやこんなん打ち上げたら、最高の思い出と引き換えに苦情の嵐だわ。
プライマイで言ったらマイナスになりそう。
「やろうよこれー!」
「やらん!俺の築き上げたご近所さんとの関係が終わる」
「なにそれ、つまんな」
そう言ってアゲハは、ホームセンターのペット売り場の方へ走って行った。
つまんなだと、この前そのご近所付き合いのお陰で美味しいお肉食えただろうが……次貰っても絶対アゲハにやらんと俺は心に固く誓った。
「ありがとうございましたー」
「ども」
店員さんの丁寧な接客に軽く会釈をして返し、俺はホームセンターを後にした。
とりあえず、簡単な手持ち花火と線香花火を買った。
家には小さいが庭があるので、そこで去年から俺とアゲハの2人で軽く花火をするのが行事の一つとなっている。
2人で花火は、地元でもよくやっていたのでその名残という感じだ。
「あ、そういうばアゲハどこ行った?」
ペットコーナーに走って行くのは見えたが、そこから15分くらい放置してしまっていた。
せっかく買い物終わって外に出たのにまた入るのか、めんどいな。
でもこの暑い中外でアゲハを待つのもなぁ……よし帰ろう。
「あー!今たいちゃん帰ろうとしたでしょ!」
「おう、タイミングいいな」
置いて帰ろうとしたまさにその時、アゲハもホームセンターから出てきた。
余談だが、今日のアゲハの服装は黒のミニスカートに肩が出ているブルーのシャツである。
大人びた服装の琴葉と違い、アゲハは少しギャルめの服装を好む。
他にもヘソが出るタイプの短めのシャツとか、太ももがしっかり出る短パンなど露出も多い。
幼馴染としてたまに心配になるが、異性として見れるかというとそうでもない。
ならこの心配はなんなのだろう、まさか親心か。
「たいちゃんさぁ、そんなんじゃ女の子にモテないよ」
「別にアゲハじゃなければ、探しに行くしついていくよ俺は」
「なにそれ!ムカつく」
そう言ってアゲハは俺を置いて小走りで行ってしまった。
別にアゲハを可愛くないとは思はない。
むしろ可愛いと思う。
でも近くにいすぎてて慣れてしまったのか、隣を歩いていても嬉しいとか胸の高鳴りとかはない。
いっそ離れて暮らしてみるか?
そしたらドキドキするかもしれない。
でも今さら離れるのもなんか違う。
「はぁ、なんかモヤモヤすんなぁ」
「え、何?なんか言った?」
「いや何でもないよ」
そう言って俺も、アゲハを追うように歩き出した。
「なんだかんだ言ってさ、たいちゃんって私といると楽しそうだようね」
「え、ま、まぁ確かに楽しいかも」
「何その微妙な顔、私結構モテるよ、そのうち誰かと付き合っちゃうかもよ」
そう言うとアゲハまた俺との距離を話すよう、早めに歩き出した。
アゲハが誰かと付き合うか……ないな。
仮にあったとしても、おそらくすぐ別れるだろう、だってこいつの世話はそう簡単にできないのだから。
「勝手にしろよ、お前がモテるのは嫌というほど知ってるし、お前が未だに誰とも付き合ってないのも知ってるしな」
「あー今、失礼なこと言った!それは聞こえたよ」
アゲハは振り返ることなくそう言った。
「でもさ!たいちゃんも同じでしょ、誰とも付き合ってないの」
「え、よく聞こえないよ」
そこそこ距離が離れてきたので聞こえづらくなってきた。
つかこの7メートルくらいの距離感で、まぁまぁ大きめの声で話すの恥ずいな、近づくか。
「だからさ、私たちが付き合っちゃえばお互いに初めてじゃなくなるよね」
ちょうど近づこうと俺が小走りを始めた瞬間、アゲハが何か言ったのはわかったが、内容は聞き取れなかった。




