第8話 私の作る料理そんなに嫌なの?
あー、暑い。
7月の終わり、3日ほど雨が降り続き夏日となった今日、エアコンをつけていないリビングは蒸し風呂と化していた。
「暑っ!この部屋ヤバすぎ」
「おう、アゲハかお帰り」
「あ、たいちゃんいたんだ」
「おういたよ、バイト休みだからな、あと泰平な」
「てかさ、たいちゃんエアコンつけようよ」
そう言ってアゲハは帰ってくるなり、エアコンをつけた。
「おいおい何やってだ!せっかく節約のため我慢してたのに」
「いや節約って、別にうちら電気代払ってないじゃん」
「うーんそうなんだがな……」
確かにアゲハの言う通り、俺たちはまだ学生で大人の庇護化にあるため電気代やら水道代は払っていない。
しかも住んでいる家は、アゲハの亡くなったおじさんが生前住んでいた一軒家で、誰も使っていないからと使わせてもらっている。
あ、別に事故物件とかではないので安心して欲しい。
おじさんは6年ほど前に病で亡くなっているが、場所は病院なのでそこら辺は問題ない。
「そうなんだがって、なに?まさかたいちゃん、今月の水道光熱費代、使っちゃったの?」
「んな訳ないだろが、ただな夏だろうと冬だろうと仕送り代は固定なんだよアゲハ、この意味わかるか?」
「え、そんなの頼めばくれるでしょ」
「いやくれないぞ、ちなみにだが去年の冬オーバーした3000円は俺の実費だ」
「はぁ!?嘘でしょありえないよ」
そうありえない、でもなアゲハ、それが事実なんだよ。
もちろん俺だってエアコンをつけたい、ただな近いんだよ検針日が……。
「落ち着けアゲハ、今日は7月26日で今月の検針日は29日だつまり、あと3日は耐えさせてくれ」
もちろんこんなの悪あがきである、でもな、それでもやらせてほしいんだ。
少しでも安くなるなら、俺は耐えられる。
「検針日ってなに?」
ふっ、思い出したぜこいつ未だにバイトすらした事ない生粋のニートだったわ。
もういいや、エアコンで涼も。
そうして俺は、アゲハのつけたエアコンの風量をマックスにした。
「ふぅ気持ちいいなアゲハ」
「ねぇ、節電するんでしょ、てか検針日について教えてよ!!」
夜7時、俺はキッチンにいた。
「さぁて、あと少しでできるぞ」
「いい匂いだね美味しそう!これなにたいちゃん?」
「あーこれか、これは豆腐で作ったチーズ入りチヂミだ」
「えー、豆腐入ってんの?」
「おいおい嫌そうにすんなよ」
豆腐と聞くとアゲハは露骨に嫌そうな顔をした。
まぁ無理もない、居酒屋の一件から1週間連続で焼き豆腐やら豆腐ハンバーグやら冷奴やらを食わせていたからな。
軽い復讐のつもりだったが、思いのほか豆腐料理が楽しかったので、また作ってみたのだ。
「私、あんましいらないかも」
「そう言うなよ、騙されたと思って食べてみろって」
「はぁ、そこまで言うなら仕方ないなぁ、不味かったら吐くからね」
そう言ってアゲハはリビングのソファへとダイブした。
あのねアゲハさん、人様の料理、ましてや自信作をね吐くからねとか間違っても言わないでほしい。
ショックで一瞬固まっちゃったよ俺。
「さぁできたぞ!」
「わぁ美味しそー!」
自家製ヤンニョムチキンに、たまごスープ、あとスーパーで売ってた混ぜるだけチュモッパ、そして豆腐入りチーズチヂミ。
今夜は韓国料理祭りである。
「お、やっぱり美味しいな」
俺はさっそく自信作である、豆腐チヂミを食べた。
「えー、怪しいな、まぁとりあえず食べてはみるか」
俺がうまそうに食べるのをみて、アゲハもチーズチヂミに箸を伸ばした。
「お、美味しい!!」
「だろ?チーズは正義なんだよ」
「私も作りたい!」
「いやマジでいいよ」
「なに、私の作る料理そんなに嫌なの?」
「うん、だって不味いもん」
そうして固まったアゲハをよそに俺はヤンニョムチキンをパクリ、うん美味しい。




