第7話 でも私だって負けたくはないよね
待ち合わせ場所である東京テレポート駅の階段下で待っていると、琴葉が小走りで階段を降りてきた。
「お待たせー」
「お、おう別に待ってねぇよ」
嘘である、本当は30分早く着いて待っていた。
7月とある日曜日、俺と琴葉はお台場の肉フェスなるものに一緒に来ていた。
「嘘はよくないと思うよ、ほんとは何分前に着いてたの?」
「さ、30分くらい前……」
「わぁすごいね、ごめんね私ももっと早くくれば良かった」
そう言うと琴葉はペコリと頭を下げた。
気にすんな、軽くポカリを2本消費しただけだし、大した事はない。
にしても最近の7月暑すぎだろ……。
あと今日の琴葉の服装が可愛すぎる。
黒のノースリーブに白のロングスカートで大人っぽさを表現しつつ、小さめのポーチで可愛らしさも出している。
これからこの子と一緒に歩けるのか、そう考えるだけで幸せだ。
あ、ちなみに俺の服装は花柄のシャツに短パンの陽気なコーデである。
もっと考えて服を選べば良かったと絶賛後悔中である。
「マジで大丈夫だから!それよりそろそろ行こうぜ」
「うん」
そうして俺と琴葉はお台場へと向かった。
横に並ぶとマジでやばい、なんかいい匂いもするし……今日は最高の一日になりそうだ。
「うわぁ、すごい人だね」
「まさに人の海って感じだな」
会場へ着くと見渡す限り人で埋め尽くされており、行きたいと思っていた出店には行列ができていた。
「あの店、行きたかったんだけど列すごいし別のところもありかもな」
本当は行きたいが、今日は琴葉もいるし列の少ないところに並ぶ方がいいよな。
「え、いやいや並ぶよ、たいちゃんローストビーフ大好きだし」
「え、お、おう」
確かにローストビーフ好物だが、そんなこと覚えていたのか琴葉のやつ。
小さい頃俺の誕生日は決まってローストビーフが出ていた、その時は琴葉と二人でよく食べてたっけ。
「小さい頃からほんと好きだよね、誕生日には毎回ローストビーフだったし」
「覚えてたのか?」
「忘れるわけないよ、1番の思い出だもん」
そう言って琴葉はニコッと笑った。
か、可愛い、つか覚えててくれたのか。
もう10年も前なのに……やばい嬉しすぎて泣きそう。
「よし、今日は俺が奢るよ」
「え、いいよ、私もバイトしてるしお金払えるよ、だから割り勘しよ」
そう言って琴葉は俺のことをじっと見つめてきた。
おいおいやめろよ、その綺麗な瞳で見つめるのは反則だろ。
「わかった、割り勘にしよう」
「うん、それがいいよね……あ、たいちゃん並ぶついでに聞きたいんだけど、アゲハさんとはどういう関係なのかな?」
「え?」
お店が決まり並ぼうとしたその時、嬉しさの絶頂にある俺を地に落とす問いが琴葉から出された。
ま、まぁそれを話すために誘ったんだけどさ、タイミング悪くない?
「やっぱし気になるかな、一緒に住んでるとかも言ってたし」
「で、ですよねー」
その後、俺は並んでる最中にアゲハと俺の関係について一緒に住んでいること、アゲハが10年来の幼馴染であることまで洗いざらい話した。
そして目当てのローストビーフが買え、俺たちは椅子とテーブルの用意がしてあるスペースに行き、そこにある椅子に座った。
「一緒に住んでて幼馴染か、それならああいう態度にもなるのも納得かも」
「いやいやだからってGPSはやばいでしょ」
「まぁ確かに……」
この前のアゲハの態度に一定の理解は示しつつもやはりGPSについては、琴葉も引いていた。
余談だが、あの一件以来俺はGPSについて調べ人並み以上に詳しくなった。
「だろ、アゲハはやりすぎなんだよ」
「アゲハちゃんの思いはそれくらい強いんだね、でも私だって負けたくはないよね」
「え、なんだって?」
琴葉がアゲハの思いについて話してるのは聞こえたが、タイミングよく風が強く吹いたせいでうまく聞こえなかった。
「なんでもない!てかさ、たいちゃんってなんか昔から鈍感だよね」
「あ、また風が、もう一回言ってくんない?」
「もう言わない……ばか」




