第6話 埋め合わせってどうやんの?
色々あった翌朝、俺はいつものように朝6時半に起きた。
だが、いつも通りじゃないことが起きていた。
「嘘だろ」
琴葉から連絡が来ていたのだ、内容は"昨日は私もごめん、色々言い過ぎちゃったアゲハちゃんにも今度ちゃんと謝る、それと埋め合わせの日程いつにする?"だ。
いやいや連絡くんのかよ。
普通あれで終わりだろ、中々の修羅場だったぞ。
つか埋め合わせってどうやんの?
「あ、たいちゃんおはよー!」
「おうおはよう、あと泰平な」
寝たいと叫ぶ体にムチを撃ち、リビングまで降りると徹夜明けのアゲハがソファでゴロゴロしていた。
「お前またゲームかよ」
「そうだよー、対人ゲームは時間が溶けるの早いんだよね、体感はまだ夜明け前だよ」
「いやガッツリ日が差してるからな」
そう言って俺はカーテンを全開にした。
「うわやめろー、何してんだバカたいちゃん」
「泰平な」
カーテンを開け日差しを取り込めば取り組むほどアゲハがもだえ苦しみ転がっている。
こういう姿を見ているとこいつがこれから社会に出ていけるか不安になる。
それに着ているシャツにもニート1号とプリントされている、今度こいつがいない間に捨ててやろうかな。
「ねぇたいちゃん、今日2限から学校だからお弁当欲しい」
「わかった作ってやるよ、何食べたいんだ?」
「やったー!ハンバーグがいい」
「了解、任せろ」
俺には数は少ないが何個か趣味がある。
そのうちの一つが料理だ。
意外かもしれないが、俺はアゲハの世話をするのが嫌いではない。
むしろ美味しそうに食べてくれるため、アゲハに料理を作るのは好んでやっている。
アゲハの母親が管理栄養士ってこともあり、こいつは昔から舌がいい。
そのため、凝った味付けをしてもすぐ気づくし、具体的にどこが美味しかったかも言ってくれる。
したがってアゲハに料理を作るのは楽しい。
「わーい、じゃあ私は寝るから10時半くらいになったら起こしてね」
そう言ってアゲハは2階の自分の部屋へと消えていった。
いやそこは自分で起きろよ。
アゲハの大学は家から10分ほどで着く、ただ駅とは反対方向にあるため、意外にも同じ大学の友人には俺と暮らしていることはバレていない。
まぁ基本的に大学生が自分の大学近くで遊ぶことは無く、まして都内なら尚更、新宿や渋谷、原宿など若者の街もあるわけで、講義が終われば皆そこへ行くので必然的に大学周辺の開拓は進まないのだ。
灯台下暗しとはまさにこのこと。
「さぁて作るか」
作ると言ってもハンバーグか、ハンバーグは意外と簡単だからあんまし面白味がないんだよなぁ。
そうだ、あいつ大豆とか豆系嫌いで普段植物性タンパク質足りてなさそうだし、ここは豆腐ハンバーグでも作ってやるか。
あとでガヤガヤ言われるの嫌だから、もちろん豆腐が入ってるのに気が付かないくらい上手く作るけど。
おっとそうだ、料理を作る前にテレビでもつけるか。
BGMがあった方が捗るしな。
そうして俺はよく見ている朝の情報番組、おきてるテレビをつけた。
『おはようございまーす、今日はここお台場で開催中の肉フェスに来ています!古今東西あらゆるところから有名店が出店し、日本のお肉の最先端が集まっています』
「あ、ここいいな」
たまたまつけた番組で、肉フェスなるものが紹介され、見ているだけでお腹が空きそうになるメニューばかりが映されていた。
そしてそれを観てふと閃いた。
埋め合わせここでいいじゃんと。
気がつくと俺は、琴葉に"なら埋め合わせにお台場の肉フェスはどうかな"と送っていた。




