第2話 必殺のGPS
楠木アゲハとは、小4の頃アゲハがこっちに引っ越してきて以来の付き合いである。
家が隣同士ってこともあり、わりとすぐに家族ぐるみの付き合いになった。
俺とアゲハは趣味が似てて、お互いにつかず離れずの距離感のまま高校まで同じところに通った。
大学は俺が少し離れたところに通うことになり一人暮らしの予定となったが、アゲハもその近くの女子大に通うことになり、シェアハウスを向こうの親に提案され、それを俺の両親が了承した。
普通、一つ屋根の下に付き合っていない男女が共に暮らすことはあまり好まれる事ではない。
しかし、アゲハの生活力の無さを知っていた向こうの両親はむしろ泰平くんがいた方がアゲハのためだからと俺の両親を説得したらしい。
ここで一つ考えてほしいのが俺のためにはならなくない?って事なのだが何故かこの時俺の両親はそこを無視し同棲を了承した。
2年ほど前の出来事だが、俺はしっかり根に持っている。
「お待たせ!」
「え、バイトもう終わったの?まだ17時40分だよ」
俺は琴葉とのご飯ブースト+アゲハ回避ブーストのお陰でめちゃめちゃ仕事を頑張った。
その甲斐あって店長から、今日色々やってくれたから早めに上がっていいとお許しを頂き、いつもより20分早く上がることに成功した。
「はは、なんか頑張ったらいけたわ、そっちこそ早いね」
「なんかね、落ち着かなくて早めに出てきちゃった」
そう言って琴葉はニカっと笑った。
か、可愛い。
つかこの展開ってよくある久しぶりの再会からの恋愛ルートじゃない?
やっば、そんな世界線俺の人生にも用意されてたのかよ。
幼馴染お世話ルートかと思ってたわ。
よしアゲハの姿は無しか、さすがに20分も早く上がったんだ、まだ来ないよな。
「じゃ行こっか」
「うん!」
そうして俺は琴葉と共にネカフェを後にした。
すまんなアゲハ、今度の夕飯は豪華にしてやるからな。
「わぁ、良い感じのお店だね!」
俺は琴葉と滅多に行かないちょっと値段の高い良い居酒屋に来た。
「お、おうよく来るんだよね」
嘘である。
普段はまず行かない、ビール一杯650円のお店である。
「なんか楽しくなりそうだね!」
テンションが上がってきたのか琴葉は、軽くピョンピョン跳ねて喜びを表現した。
か、可愛い。
ただ、跳ねて揺れるたびに琴葉の可愛くない大きさのお胸がたゆんたゆんと揺れている。
おいおい俺までわくわくしてきたんだが!
「いらっしゃいませ~、何名様で?」
「2名です、奥の席空いてます?」
店内に入るとすぐ、良い感じの水槽と着物を着た良い感じの店員さんがお出迎えしてくれた。
行き慣れている風を装うため、それっぽく奥の席と言ってみたが、これであってるよな?
「かしこまりました、それではご案内しますね」
そう言って店員さんは、俺たちを先導し奥の席?へと案内してくれた。
良かったぁ、とりあえずありそうだわ奥の席。
「ねーねー」
「え、なに?」
店員さんを先頭に移動していると、琴葉がちょいちょいと俺の服を引っ張ってきた。
「本当によく来てるんだ、凄いね」
「お、おう」
よし、琴葉の方もうまく勘違いしてくれるな。
今のところ順調だぞ。
「こちらの席になります」
「ありがとうございます」
歩くこと十数秒、目当ての席へとたどり着いた。
ふぅ、とりあえず席に着いたぞ、さてここから本当の戦いだな。
「失礼致します、あ、お客様もしかして他にもお連れの方とかいたりします?」
「え、いないですけど、なんでですか?」
「失礼致しました、いや受付に今ちょうどお客様達くらいの若い方が来て、待ち合わせだと言っているらしく」
店員さんは困った顔でそう言ってきた。
見ると店員さんの耳にはイヤホンしてあり、どうやらインカムの様なもので店員間のやりとりをしてるようだった。
おいおい、まさか嘘だよな。
「えっと多分、知らない人です、はい」
「そうですか、五反田様って人を探してると言っていて、失礼ですがお客様のお名前は?」
「えっと……」
俺の名前は五反田泰平、大学2年のイケイケ男子大学生である。
そんな俺だが現在ピンチである。
彼女でもないただの同居人アゲハに後追い来店という詰みの一手を打たれ、今晩の琴葉さんお持ち帰り大作戦が終わりを迎えようとしているのだ。
あー、マジでアゲハのやつなんなんだよ。
つかどうやってきたんだよ……。
その時、俺のズボンにある普段使っていないポケットに違和感を感じ、そのポケットに手を突っ込んでみた。
『ピピッ』
「え、何これ」
「あ、それ」
俺がそれをポケットから出すと、琴葉が知ってる風に反応した。
「え、わかるの?」
「う、うん、多分それGPS」
「は?」
はい逮捕ー!
アゲハ逮捕ー!!




