第15話 パラソルって重くね?
「あ、アゲハに五反田、あと琴葉ちゃん!お前らどこ行ってたんだよ」
「いやちょっと焼きそば買いに行ってまして…」
「そうなん?それにしちゃあ、焼きそばがないようだけど」
「色々ありまして」
あの後、琴葉とアゲハはそれはもう大きな喧嘩をした。
お互いの見た目の悪口から始まり、次は心が小さいだの、私の方が俺のことを思っているだの言って、それはもう大変だった。
周りに人が集まり始めた辺りで、恥ずかしくなったのかお互いに下を向いたまま俺を引っ張り、先輩のいた方向へと戻ってきた。
まったく、喧嘩もほどほどにしてくれよ、本当に。
あと喧嘩の仲裁に入ろうとしたとき、周りからあれ誰彼氏か、どっちの?まさか二股かとか色々言われた。
いやいやそれがどちらとも付き合ってないんですよ、片方とは付き合いたいんですけど、もう片方とは逆に離れたいんですよね、はい。
「そっか、大変だったんだな」
「あ、そういえばこんなんもらったぞ」
そう言って先輩は、砂浜にブッ刺さってるパラソルを指差した。
「あー!パラソルだ!やったー!」
パラソルの生み出す日陰を見るや、アゲハがそこに突っ込んだ。
まぁ今日暑いもんな、こんな暑い中喧嘩とかよくやるよ、ほんと。
「てか先輩、このパラソルどうしたんですか?」
「あーなんかくれたわ、そこら辺のやつが、もうどっか行ったけど」
「そこら辺のやつですか……」
辺りを見回してはみたが、人が多すぎて誰がくれたかまったくわからん。
つか、パラソルってそんな簡単にもらえるのだろうか……さすがは先輩だ。
「あ、そこの琴葉だっけ?お前みたいなバカ女は入るなよ」
素早くパラソルの日陰を陣取ったアゲハが、琴葉を指差しそう言い放った。
まったくお前のでもないだろうに。
「やめろアゲハ、いい加減仲良くしろよ」
「あ、たいちゃんあいつの肩を持つの!そんなひどいよ可愛い幼馴染がいるのに」
「何が可愛い幼馴染だ、お前はただの居候だろ、さぁ琴葉も暑いし遠慮なく日陰に入ってくれ」
「え、ありがとたいちゃん」
俺はそう言ってさりげなく琴葉の手を引いて、パラソルの日陰の中に向かい入れた。
「あ!たいちゃん手つないじゃダメだよ!そんなバカ女と!」
「アゲハいい加減にしろって」
「そうそう、あと幼馴染は私も一緒だから」
「は?なんだよまたやろうってのか」
おいおいまた喧嘩する気かよ。
「やめろアゲハ、それに琴葉ちゃんも」
「え、先輩……」
「いいかアゲハ、あと琴葉ちゃんも、喧嘩なんてしてないで海で遊べよ、せっかく私の運転で来てんだから無駄にすんなよ私の努力をさ」
「す、すみません」
そうこの海へは先輩の運転で来た、本当だったら電車で行く予定だったのだが、先輩が気を利かせてくれて車で来てくれたのだ。
パラソル確保に車の運転とかマジでこの先輩今日のMVP、あとでご褒美にハグしてみようかな。
いややめよう、アゲハもいるしなんなら琴葉もいるし。
「上小路さん、ごめんなさい」
「いいんだよ琴葉ちゃん、せっかく楽しい海なんだししっかり遊んで、そのあと居酒屋にいってもっと楽しいことしよう!」
しゅんとしている琴葉を先輩はそう言って慰めた。
いやいいんだよ、慰めてくれるのは。
でもねその慰め方、なんかやだ、なんかおっさんみたい。
なんだよ居酒屋に行ってもっと楽しいことって、逆に気になるわ。
てかなんとなくパラソル握ってみたけど、結構重いだろこれ。
凄いなこれを持ってくるとか、ほんと誰なんだよ持ってきたやつ。




