第10話 メガネっ子っあたしだけいればよくない?
「あー今日、暇だな」
「五反田ー、暇とか言うなら暇とか、お客様に聞こえるだろ」
夏休み、俺は今日も今日とてバイトに来ている。
隣にいるのは美人なメガネっ子先輩こと上小路先輩。
俺と先輩は同じ大学であり、同じバイト先。
シチュエーション的には話題は弾みまくり、デートとかにあれよあれよといけてしまうはずだが、俺は誘わない。
何故なら。
「なぁ五反田よぉ、巷でメガネっ子可愛いとか言われてるけど全員もれなく私以下だと思わないか?私は思う」
「そっすねー」
「だろぉ、つまりだな五反田、メガネっ子あたしだけいればよくない?」
そう性格が破滅してるのだ。
顔は可愛いし、身長も高い、180センチある俺と並んでも小さく見えない事から170センチ以上はある。
スタイルだっていい、でも色々失礼な言動が多くおまけに品もない。
つまりデートには行かない。
「先輩、そういうのあんまし言わない方がいいっすよ」
「なんでだよ、この顔だにこの身長だぞ、胸だって大きい、最強じゃんかあたし」
「でも先輩、彼氏いないじゃないすか……って痛い、痛いっす先輩」
俺がその必殺の単語を口にするや否や、先輩は思いっきり俺の足を踏みつけた。
「五反田、お前さデリカシーとかないわけ?失礼すぎて私泣きそう」
「わかった、謝るから許して先輩」
全力で謝罪すると先輩は足を解放してくれた。
あっぶね、踏む力強すぎて足痺れたんだが……。
「あ、そうだ五反田、バイト終わったら飲み行こうぜ」
「いいっすよ」
「お、サンキュー、あとついでにアゲハも呼んどいてあいつおもろいし」
「了解っす」
サクッと美人な先輩との飲みの約束をする事に成功した。
この場合はとても嬉しいはずなのだが、残念ながら嬉しさはもうない。
かれこれ20回以上飲みに行っているため、もはやバイト後の流れとなっている。
あと先輩とアゲハは知り合いで、アゲハは先輩のことが最近になってやっと嫌いからそこそこ普通になった。
はじめは俺と先輩が実はできているんじゃないかと勘ぐり、バイト先に来たり、先輩の後をつけたりとありがたくない迷惑をして色々してきたが、俺にその気がないのと、先輩の性格が終わっているのがわかってからはしなくなった。
ただそのタイミングで、今度は先輩の方がアゲハを気に入り、おもちゃにして遊んだためアゲハ一時期、先輩のことを社会的に抹殺しようとしていた。
まぁそこから紆余曲折あって、今では嫌々ながらも飲み会には来てくれるようになったのだ。
「しっかし、アゲハも馬鹿だよなぁあたしと五反田が付き合ってると思ってたとか」
「ほんとですよ、絶対あり得ないのに」
「それは失礼だな、ならほんとに付き合っちゃうか?」
そう言って先輩は俺にきゅっと抱きついてきた。
おいおい今さらそんな見えすぎたトラップに俺が引っかかるかよ、飲み会のネタにはならんからな。
あと胸を押し付けるのやめてくださいね、俺も一応男の子なんで。
そうして俺は抱きつく先輩を振り払った。
「はいはいそうですね付き合いませんよ、今日どの店行きます?」
「なんだよ面白くねぇな、焼き鳥屋行こうぜ」
そう言って先輩はニカっと笑った。
まったく人をからかうのも大概にしてくれ。




