表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世のペットを召喚できる俺、どの子もこの世界では規格外でした ~レベル解放で家族が増える召喚士~  作者: いたちのこてつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/121

第112話 新しい家族と孤児院

翌朝の借家は、少し静かだった。


いつも通りに動いているはずなのに、どこか噛み合っていない。カケルは朝の支度をしながら、ふと手を止めることがあった。昨日エアリスから聞いた話が、まだ胸の奥に沈んでいるのだろう。


リアナはその様子を見ていたが、正面から何か言うことはしなかった。代わりに、朝食の片づけが終わったところで、ぱんと手を打つ。


「ねえ師匠」


カケルが顔を上げる。


「新しい子たち、孤児院の子たちに見せに行きましょう」


少しだけ間があった。それからカケルは、小さく息を吐く。


「……うん。そうだね」


リアナはそこでようやく少し笑った。


「きっと喜ぶわ。あの子たち、絶対人気だもの」


「ガブ君は気をつけないとだけどね」


「ああ、それはそうね」


そう決まると、借家の空気は少し動いた。


ガブ君は何も知らずに椅子の脚のあいだを駆け回り、フクロモモンガたちは吊るしたポーチの中でもぞもぞしている。ハムとマカロニは藁の上から顔を出し、ひげを揺らした。


孤児院に着くと、庭先のほうからすでに子どもたちの声が聞こえてきた。


「今日も賑やかね」


リアナがそう言って門をくぐり、カケルも続く。


中へ入ったところで、二人はそろって少し足を止めた。そこにいたのはヴィクトールだった。


腕を組んだまま、いかにも得意げに子どもたちを前に立っている。どうやらまた孤児院へ顔を出していたらしい。


カケルたちに気づくと、ヴィクトールは眉を上げた。


「なんだ、お前たちか」


「兄様……今日はこっちに来てたのね」


リアナが言うと、ヴィクトールは鼻を鳴らす。


「当然だろう。貴族の務めだ」


さっきまでは男の子たちがヴィクトールのまわりに集まっていたらしい。けれど、カケルが新しい家族たちを連れてきたのに気づいた途端、そちらへ子どもたちの視線が流れた。


「わっ、新しい子!?」

「この子たちなんていうの?」

「ちっちゃい!」


子どもたちが一気に寄ってくる。


リアナが笑いながらしゃがみこんだ。


「ほら、慌てないの。順番よ」


カケルはまずガブ君を足元へ下ろした。細長い体がするりと前へ出るだけで、子どもたちの目が丸くなる。


「イタチ!?」

「そうだね、イタチの仲間だよ。ガブ君っていうんだ」


そう言ったそばから、ガブ君はぴょんぴょん跳ねはじめる。「クックック」と鳴きながらその場を跳ね回る細長い体に、子どもたちの声が上がった。


「すごい!」

「可愛い!」

「ながい!」


リアナがすぐに言い添える。


「でも、この子は噛むから気をつけてね」


「遊びだと噛みたがるんだよね」


カケルがそう言うと、子どもたちは一歩引きつつも目を離さない。


次にポーチから顔を出したのは、レン、ユズ、モモ、ウメだ。四匹がちょろちょろと高いところへ移るたび、今度は女の子たちのほうから歓声が上がる。


「見て見て、ちっちゃい!」

「わ! とんだ!」

「しっぽかわいい!」


そのままハムとマカロニを出した瞬間、空気が変わった。


「わあ……」

「なにあれ……」


丸い体に太いしっぽ。二匹が少し足を動かしただけで、女の子たちはすっかり夢中になっている。


ヴィクトールはそれを見て、一瞬だけ目を細めた。


だが次の瞬間には胸を張った。


「ふん。今日は久しぶりにサンダーウルフたちの勇姿を語ってやろうではないか。特別にな!」


その声に、男の子たちがぱっと振り向く。


「サンダーウルフ!?」

「また聞きたい!」

「強い魔獣の話!」


たちまち、そちらへ駆け戻っていく。


ヴィクトールは満足そうに頷いた。


「さすが男子たちだ! わかっているな!」


リアナが思わず吹き出す。


「なによそれ」


「当然だろう。強さの価値が分かるのはよいことだ」


そう言いながらも、ヴィクトールはちらりと女の子たちのほうを見ていた。そちらはそちらで、ハムとマカロニ、そしてモモンガたちに夢中のままだ。


カケルはその様子を見ながら、少しだけ口元を緩めた。


孤児院の子どもたちは反応が素直だ。ガブ君が跳ねれば笑い声が上がり、モモンガたちが高いところへ移れば目で追い、ハムとマカロニが寄り添えばしゃがみこんで見つめる。


その輪の中で、ハムとマカロニはとくに慌てるでもなく、ただ部屋の隅から隅までを確かめるように動いていた。


一人の女の子が、そっと言う。


「この子たち、見てるとなんか落ち着く」

「ほんとだ」


別の子も、その場にぺたりと座りこんだ。


無理にスキルを使わせなくても、ただそこにいるだけで空気が丸くなる。カケルはそのことに気づいて、ハムとマカロニへ視線を向けた。


リアナも小さく頷く。


「やっぱり、あの子たちはこういう場所に合うわね」


そのころ、ヴィクトールのほうでは男の子たちを前に話が盛り上がっていた。


「そこでサンダーウルフが一歩前へ出たのだ! 普通の魔獣なら、あの時点で足がすくんでいたな!」


「すげー!」

「やっぱ強い!」


どうやら今日は機嫌がいいらしい。子どもたちが夢中で聞いているのを見て、話にも熱が入っている。


リアナがぼそりと漏らす。


「ほんと、単純よね」


「聞こえてるぞ」


「聞こえるように言ったもの」


そのやり取りに、近くの子どもたちまで笑った。


しばらくして、孤児院の人がお茶を持ってきた。


「今日はまたずいぶん賑やかですね」


穏やかな声だった。


カケルは頭を下げる。


「急に大勢連れてきてすみません」


「いいえ。みんな、ずっと楽しそうですから」


孤児院の人はそう言って、少しだけ目を細めた。


「昨日から、なんだか元気のない子もいたんです。でも今日はよく笑ってくれていて」


カケルはそこで、胸の奥の重さが少しだけ軽くなるのを感じた。


リアナが子どもたちの輪の中を見ながら言う。


「来てよかったわね」


カケルは、ハムとマカロニのそばでしゃがみこんでいる女の子たちを見た。


モモンガたちは高いところで落ち着き、ガブ君はガブ君で、今度は少し離れたところでひとり跳ねている。男の子たちはヴィクトールに群がったまま、サンダーウルフの話に夢中だ。


「……うん」


今度はすんなり、その言葉が出た。


帰るころには、子どもたちから「また来てね」がいくつも飛んだ。ヴィクトールだけは腕を組んだまま、


「次はもっと詳しく語ってやる」


と、なぜか上から言っていたが、その足元にはまだ男の子たちが群がっている。


孤児院を出たあと、リアナは横を歩きながらカケルを見た。


「ちょっとは顔が戻ったわね」


カケルは少しだけ苦笑する。


「そんなに分かりやすかった?」


「うん。わりと」


借家へ戻ると、しばらくして扉が叩かれた。きっちりとした制服姿の使いだ。差し出された封を見た瞬間、リアナが目を見開く。


「……ちょっと待って。それ、王家の紋章じゃない」


カケルは封筒とリアナの顔を見比べた。


「え?」


カケルが受け取り、封を切る。短く整った文面を目で追ったあと、思わず瞬きした。


「……王城に?」

執筆の励みになりますので、続きを読みたいと思っていただけたら、ぜひブックマークよろしくお願いします!評価もいただけると嬉しいです。


本作の他にも、完結済みの作品を公開中です。


■魔王軍、おもてなしの極致 〜聖女の笑顔のために軍予算を「観光」へ全振りしたら、魔界が爆益を上げ始めた件〜

https://ncode.syosetu.com/n1299lr/


■人間嫌いの私は闇の精霊(上級)に転生しました。~見た目が「黒い毛玉」なので無能と罵られましたが、契約主の孤独な侯爵令嬢と共にレベルアップして毒親たちを断罪します~

https://ncode.syosetu.com/n5749lp/


■異世界コンサルはじめました。~元ワーホリマーケター、商売知識で成り上がる~

https://ncode.syosetu.com/n5582kv/


ぜひこちらもお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ