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出逢い

 5月12日の火曜日。

 僕はクラスメイトから水を浴びせられ、びしょ濡れになった。

 保健室で体操服を借りて、着た。

「ハックションはっくしゅんあぁー」

 くしゃみをして、嘆いた。

 スニーカーも靴下もびしょ濡れだ。

 帰るのが億劫だ。

 屋上へと出て、濡れた制服を乾かそうとした。

 離れた位置から声が掛けられた。

「君、ジャージでサボリかい?」

 女子生徒だった。

 上級生で二年生だった。

「クラスメイトにいじめられ、ジャージになりました」

「そう。私がそいつらに一言言ってきてやろうか?」

 正義感から出た言葉ではなさそうだった。

「いいです。先輩が標的にされますって」

「ふぅーん。じゃあ言わずにおいてやろう」

「外に出てたときにやられたのか?」

「ええ、はい……」

「……」

 僕は制服を手摺りに掛けて、乾かした。

「入学して早々に大変だな」

「……はい」

「君の名前は?」

「市原です」

「それは苗字だろ」

「貴政です」

「市原ぁ、なんで屋上に来た?」

「名前を聞いた意味ないじゃないですか!」

「市原の方が呼びやすかったからだよ。飛び降りようとした、とかじゃないよな?」

「そんな……まさか。制服を乾かそうと来たんです」

「あっそう。市原は死にたがりか?」

 彼女はネガティブなことばかりを聞いてきた。

「そうだって言ったら、どうしますか?」

「私と一緒に酒を呑もう。一緒に酒を呑める日が来るまで生きよう」

「ぷふっはははは!!あははは。くっふっふふぅ。なんです、それ?」

 僕は腹を抱え、大声で笑い出した。

 聞いたことのない誘いで、初対面なのに笑ってしまった。

「笑えんじゃねぇか!死にたくなったら、私を思い出せ。私と酒を呑める日を生きがいに生きろ」

 彼女が、僕の曲がった背中を満足するまで叩いてきた。

「あぁ〜はい」

 彼女の下手な励ましに死ぬ気は無くなった僕だった。

 彼女は屋上の中央に歩いていき、スリッパを脱いで、仰向けに寝そべる。

「市原もサボるなら寝ていけよ」

 僕は促されるまま、彼女の隣でスリッパを脱いで、裸足の脚のまま彼女の隣に寝そべった。

「先輩、名前を伺っても」

「姶良だ。姶良さんって呼べ」

「あっ姶良さんはなんで屋上でサボっているんですか?」

「市原のに比べりゃ軽いが……教師がウザくて出る気がしない」

 姶良は顔に当たる陽射しを片手で遮って返答した。

「そうですか」

 乾かす制服が飛ぶような風は吹いておらず心地良い風が吹いていた。

「姶良さんってそんなに酒を呑みたい派なんですか?」

「ビールとは言っちゃいないだろ。ほろよいとかああいうのは呑んでみたい」

 僕と姶良は、その後もくだらない雑談で暇を潰した。

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