第49話『国際展示会への出展』
柊との関係を社内に公表してから二週間が経った。
従業員たちは温かく私たちを受け入れてくれ、むしろ以前よりも親しみを持って接してくれるようになった。
そして、国際展開のプロジェクトも大きな節目を迎えようとしていた。
午前十時、副社長室で佐藤部長からプレゼンテーションを受けていた。
「副社長、ベルリンで開催される国際環境技術展示会への出展が決定しました」
私は資料を見る。
「ベルリンの展示会ですか」
佐藤部長は頷く。
「はい。ヨーロッパ最大規模の環境技術展示会で、世界中から企業が集まります。当社の環境配慮型製品を展示する絶好の機会です」
田中部長が補足する。
「すでに複数の欧州企業から、『展示会で実物を見たい』という要望が寄せられています。この展示会で成功すれば、欧州市場での地位を確立できます」
私は少し考える。
「展示会は、いつですか?」
佐藤部長が答える。
「来月です。準備期間は三週間しかありませんが、十分に対応できます」
私は頷く。
「わかりました。全力で準備を進めてください。私も、展示会に同行します」
佐藤部長と田中部長は驚く。
「副社長も、ベルリンへ?」
「はい。これは当社にとって重要な機会です。私自身が現地で製品を説明し、顧客と直接交渉します」
佐藤部長は嬉しそうに頷く。
「それは心強いです! 準備を進めます」
二人が部屋を出た後、柊が入ってきた。
「お疲れ様です。ベルリンの展示会、聞きました」
私は柊を見る。
「はい、来月出展します。私も現地へ行くことにしました」
柊は少し心配そうな表情を見せる。
「莉央さん、ベルリンは遠いですよ。大丈夫ですか?」
私は微笑む。
「大丈夫です。これは、当社の未来がかかっています」
柊は席に着く。
「それでは、僕も同行します」
私は驚く。
「柊さんも?」
柊は頷く。
「はい。契約交渉の際、法務面でのサポートが必要です。それに……あなたを一人にはできません」
私は顔が赤くなる。
「柊さん……ありがとう」
柊は微笑む。
「当然です。僕は、あなたの恋人であり、ビジネスパートナーですから」
その日の午後、緊急会議が招集された。
父、柊、本間常務、佐藤部長、田中部長が集まる。
私はベルリン展示会への出展計画を説明する。
「来月、ベルリンで開催される国際環境技術展示会に出展します。私と柊さん、佐藤部長、田中部長で現地へ向かいます」
父が質問する。
「展示ブースの準備は間に合うか?」
佐藤部長が答える。
「はい。すでに製品サンプルは完成しています。説明パネルとプレゼンテーション資料も、来週完成予定です」
本間常務が言う。
「予算はどうでしょうか?」
田中部長が資料を示す。
「展示会の参加費、渡航費、宿泊費を合わせて、約八百万円です」
父が頷く。
「問題ない。承認する」
私は全員を見回す。
「この展示会は、当社の国際展開にとって重要な一歩です。成功させましょう」
全員が頷く。
「はい、副社長!」
その夜、自宅で母と食事をしていた。
「莉央、ベルリンへ行くんですって?」
「うん、来月、展示会があるの」
母は少し心配そうに言う。
「遠いわね。気をつけてね」
「大丈夫よ。柊さんも一緒に行くから」
母は微笑む。
「それなら安心ね。柊さんがいてくれれば」
私は母を見つめる。
「お母さん、私、この展示会を成功させたいの。会社の未来がかかっているから」
母は私の手を握る。
「莉央、あなたなら大丈夫よ。あなたは、もう立派な副社長なんだから」
「ありがとう、お母さん」
母は続ける。
「でも、無理はしないでね。体調を崩したら、元も子もないわ」
「うん、気をつけるよ」
翌週から、展示会の準備が本格化した。
製品サンプルの最終確認、説明パネルのデザイン、プレゼンテーション資料の作成、すべてが同時に進行する。
私は毎日、佐藤部長と田中部長と打ち合わせを重ねた。
「このパネル、もう少し文字を大きくしてください。遠くからでも読めるように」
「プレゼンテーション資料は、英語とドイツ語の両方を用意します」
「製品サンプルは、十個準備します。展示用と配布用に分けます」
柊も、契約書の準備を進めていた。
「莉央さん、欧州企業との契約書テンプレートを作成しました。現地で交渉がまとまれば、すぐに契約できます」
「ありがとう、柊さん。完璧です」
そして、出発の一週間前、リハーサルを行った。
会議室に展示ブースを模した空間を作り、実際にプレゼンテーションを練習する。
私が英語で製品を説明する。
「This is our eco-friendly product line. We have reduced material costs by 20% and environmental impact by 30%.」
佐藤部長と田中部長が、質問役を務める。
「What is the durability of this product?」
「Our product has been tested for long-term use and shows superior performance compared to competitors.」
柊が後ろで見守り、アドバイスをくれる。
「莉央さん、素晴らしいです。でも、もう少しゆっくり話した方が、相手に伝わりやすいですよ」
私は頷く。
「わかりました。もう一度やってみます」
リハーサルを何度も繰り返し、完璧に仕上げる。
出発前日、私は柊と二人でオフィスに残っていた。
「莉央さん、準備は万全ですね」
「はい、あとは現地で全力を尽くすだけです」
柊は私の手を取る。
「莉央さん、緊張していますか?」
私は正直に答える。
「少し……でも、これは大きなチャンスです。絶対に成功させたいです」
柊は優しく微笑む。
「莉央さん、あなたなら大丈夫です。これまでも、どんな困難も乗り越えてきました。今回も、必ず成功します」
私は柊を見つめる。
「ありがとう、柊さん。あなたがいてくれるから、私は頑張れます」
柊は私を抱きしめる。
「僕も、あなたがいるから頑張れます。一緒に、成功させましょう」
私たちは抱き合い、互いに力を与え合う。
翌朝、成田空港で佐藤部長、田中部長と合流した。
「副社長、おはようございます!」
「おはようございます。準備は大丈夫ですか?」
「はい、完璧です!」
柊も私の隣に立つ。
「さあ、ベルリンへ行きましょう」
私たちは搭乗ゲートへ向かう。
飛行機の中で、私は窓の外を見つめる。
雲の上を飛ぶ飛行機。
これから、私たちはベルリンへ向かう。
国際展示会という大きな舞台で、当社の製品を世界に示すのだ。
柊が私の手を握る。
「莉央さん、大丈夫ですよ」
私は柊を見つめ、微笑む。
「はい、大丈夫です。一緒に頑張りましょう」
柊は優しく微笑み返す。
「はい、一緒に」
十二時間のフライトを経て、私たちはベルリンに到着した。
空港を出ると、冷たい風が吹いていた。
ヨーロッパの秋は、日本よりも寒い。
「寒いですね」
田中部長が言う。
「はい、でも、これから熱い戦いが始まりますよ」
私は微笑む。
私たちはホテルにチェックインし、すぐに展示会場へ向かった。
巨大な展示場には、世界中から企業が集まり、それぞれのブースを準備していた。
私たちのブースも、すでに設営が始まっていた。
「副社長、こちらです」
現地スタッフが案内してくれる。
ブースには、当社の製品サンプルと説明パネルが美しく配置されていた。
「素晴らしい……」
私は感動する。
佐藤部長が言う。
「明日が本番です。今日は、最終確認をしましょう」
私たちは夜遅くまで、ブースの調整とリハーサルを行った。
ホテルに戻ると、すでに深夜だった。
柊が私の部屋を訪れる。
「お疲れ様です。明日が本番ですね」
「はい……緊張します」
柊は私を抱きしめる。
「莉央さん、あなたは素晴らしい副社長です。自信を持ってください」
私は柊の胸に顔を埋める。
「柊さん、ありがとう」
柊は優しくキスをする。
「おやすみなさい、莉央さん。明日、一緒に成功させましょう」
「おやすみなさい、柊さん」
ベッドに横になり、天井を見つめる。
明日、展示会が始まる。
世界中の企業が集まる場所で、当社の製品を示すのだ。
私は、絶対に成功させる。
会社の未来のために。
従業員のために。
そして、柊と一緒に築く未来のために。
私は目を閉じ、深く眠りについた。
明日、新しい戦いが始まる。




