第42話『次世代のリーダー』
柊との食事から三日が経った。
私たちの関係は、表面的には以前と変わらない。
しかし、私の心の中では、柊への想いが少しずつ大きくなっていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
午前十時、本間常務が副社長室に入ってきた。
「副社長、お知らせがあります」
「どうしたんですか?」
本間常務は嬉しそうに、雑誌を差し出す。
「PRESIDENT WOMANの最新号が発売されました。副社長が表紙です」
私は驚いて雑誌を手に取る。
表紙には、私の写真が大きく掲載されていた。
『次世代のリーダー 水瀬莉央 婚約破棄から復活、副社長として会社を守る決意』
私は記事を開く。
そこには、婚約破棄の記者会見から株主総会までの経緯、私の想い、そして未来へのビジョンが丁寧に綴られていた。
記事の中で、私はこう語っていた。
「私は、社長の娘である前に、一人の人間です。自分の人生を、自分で決める権利があります。婚約破棄は辛い経験でしたが、それが私を成長させてくれました。今は、会社を守り、従業員、取引先、株主の皆様のために全力を尽くす覚悟です」
記事の最後には、編集者のコメントが添えられていた。
「水瀬莉央氏は、次世代のリーダーとして期待される人物だ。婚約破棄という逆境を乗り越え、副社長として会社を守り抜いた姿勢は、多くの働く女性の共感を呼ぶだろう。彼女の今後の活躍に、注目したい」
私は胸が熱くなる。
「本間常務、これは……」
本間常務は微笑む。
「副社長の活躍が、広く認められた証です。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本間常務が部屋を出た後、私は雑誌を読み返す。
自分の写真が表紙に載るなんて、夢にも思わなかった。
一周目の私なら、こんなことは絶対にあり得なかった。
婚約破棄の後、私は引きこもり、社会から逃げていた。
しかし、二周目の私は違う。
逆境を乗り越え、副社長として会社を守り抜いた。
そして、次世代のリーダーとして認められた。
スマートフォンが鳴る。
父からの電話だ。
「莉央、雑誌を見たぞ。素晴らしい!」
「お父さん、ありがとう」
父は嬉しそうに言う。
「莉央、お前は本当に立派な副社長だ。私は、お前を誇りに思う」
「お父さん……」
「さあ、今日は祝おう。夜、家族で食事をしよう」
「はい、楽しみにしています」
電話を切った後、柊から連絡が入る。
『おめでとうございます。雑誌、拝見しました。素晴らしい記事です』
私は微笑み、返信する。
『ありがとうございます。これも、柊さんのおかげです』
すぐに返信が来る。
『いいえ、あなた自身の実力です。自信を持ってください』
私は胸が温かくなる。
柊は、いつも私を認めてくれる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
午後二時、製造現場を訪れた。
従業員たちが、笑顔で迎えてくれる。
「副社長、おめでとうございます!」
「雑誌、見ましたよ! すごいですね!」
「私たちも誇りです!」
私は一人一人と握手をする。
「ありがとうございます。でも、これは皆さんのおかげです。皆さんが頑張ってくれたから、会社は成長できました」
山田部長が進み出る。
「副社長、従業員一同から、お祝いのメッセージを用意しました」
山田部長は、大きなボードを見せてくれる。
そこには、従業員全員のサインとメッセージが書かれていた。
「副社長、これからも一緒に頑張りましょう!」
「水瀬コーポレーションの未来を、一緒に創りましょう!」
「副社長、いつもありがとうございます!」
私は涙が出そうになる。
「皆さん、本当にありがとうございます。私、頑張ります」
従業員たちは拍手をする。
私は、この人たちのために頑張らなければいけない。
この人たちの未来を、守らなければいけない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
午後四時、副社長室に戻ると、柊が待っていた。
「お疲れ様です。製造現場、どうでしたか?」
「素晴らしかったです。皆さんが、本当に喜んでくれました」
柊は微笑む。
「それは良かった。莉央さん、あなたは従業員に愛されています」
私は席に着く。
「柊さん、雑誌の反響はどうですか?」
柊はタブレットを差し出す。
「SNSでも話題になっています。『次世代のリーダー』というハッシュタグがトレンド入りしました」
私は画面を見る。
そこには、多くの好意的なコメントが並んでいた。
「水瀬莉央さん、素晴らしい! 応援しています!」
「婚約破棄を乗り越えて副社長に。本当に強い人ですね」
「こういう女性リーダーが増えてほしい」
「水瀬コーポレーションの製品、買いたくなりました」
私は驚く。
「こんなに反響があるんですね」
柊は頷く。
「はい。莉央さんのストーリーは、多くの人の共感を呼んでいます。特に、働く女性からの支持が大きいです」
私は少し考える。
「これは、会社にとってもプラスですね」
柊は微笑む。
「その通りです。副社長の知名度が上がれば、会社のブランド価値も上がります。採用にも、営業にも有利です」
私は頷く。
「わかりました。これからも、しっかりと発信していきます」
柊が立ち上がろうとしたとき、本間常務がノックをして入ってきた。
「副社長、取材の依頼が殺到しています」
私は驚く。
「取材ですか?」
本間常務は頷く。
「はい。日経WOMAN、VERY、そして複数のテレビ局からも依頼が来ています」
私は少し考える。
「どうしましょうか?」
柊が言う。
「受けるべきです。今、莉央さんの知名度は非常に高い。この機会を活かして、会社のビジョンを広く伝えるべきです」
私は頷く。
「わかりました。本間常務、取材は受けます。ただし、スケジュールを調整してください。業務に支障が出ないように」
本間常務は一礼する。
「承知しました」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
その夜、家族で食事をした。
父と母、そして私の三人で、お祝いの乾杯をする。
「莉央、本当におめでとう」
「ありがとう、お父さん、お母さん」
父は嬉しそうに言う。
「莉央、お前は本当に立派な副社長だ。次世代のリーダーとして、多くの人に認められた」
母も微笑む。
「莉央、お母さん、本当に誇りに思うわ」
私は胸が一杯になる。
「お父さん、お母さん、これからも頑張ります」
食事の後、母が私を呼び止める。
「莉央、最近、柊さんとはどうなの?」
私は顔が赤くなる。
「お母さん……」
母は笑う。
「いいのよ、莉央。お母さんには、わかるのよ。あなた、柊さんのこと好きなんでしょう?」
私は恥ずかしそうに頷く。
「うん……でも、今はまだ仕事に集中したいの」
母は私の手を握る。
「それでいいわ。焦らないで、ゆっくり自分の気持ちを確かめればいい。柊さんは、きっと待っていてくれるわ」
「うん、ありがとう」
母の言葉が、私の心を温める。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ベッドに横になり、天井を見つめる。
次世代のリーダーとして認められた。
多くの人が、私を応援してくれている。
従業員も、家族も、そして柊も。
私は、もう一人じゃない。
たくさんの人に支えられて、ここまで来ることができた。
これからも、その期待に応えるために、全力を尽くそう。
そして、いつか、柊に答えを伝えよう。
私の気持ちを、正直に。
スマートフォンが振動する。
柊からのメッセージだ。
『今日は、お疲れ様でした。明日から、さらに忙しくなりますが、一緒に頑張りましょう』
私は微笑み、返信する。
『はい、一緒に頑張りましょう。柊さん、いつもありがとうございます』
メッセージを送信し、私はスマートフォンを置く。
そして、祖母のペンダントを手に取る。
「おばあちゃん、私、次世代のリーダーとして認められたよ。これからも、頑張るね」
ペンダントが、月明かりに輝く。
私は目を閉じ、深く眠りについた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
翌朝、会社に着くと、入口に多くの報道陣が集まっていた。
「水瀬副社長、一言お願いします!」
「次世代のリーダーとして、どう思われますか?」
私は笑顔で答える。
「ありがとうございます。私は、ただ会社を守り、従業員、取引先、株主の皆様のために全力を尽くしているだけです。これからも、水瀬コーポレーションを成長させるために頑張ります」
報道陣から拍手が起こる。
副社長室に入ると、柊が待っていた。
「お疲れ様です。報道陣の対応、完璧でした」
「ありがとうございます」
柊は真剣な表情で言う。
「莉央さん、これから、あなたはさらに注目されます。期待も、批判も、両方受けることになるでしょう。でも、あなたなら大丈夫です。自信を持ってください」
私は柊を見つめる。
「柊さん、あなたがそばにいてくれるなら、私は頑張れます」
柊は微笑む。
「僕は、いつもあなたのそばにいます」
私たちは見つめ合う。
そして、新しい一日が始まる。
次世代のリーダーとして、私は前を向いて進むのだ。
柊と一緒に、未来を創るのだ。




