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最後のランチ会

ランチの招集に予定がついたのは、私と楓と綾だ。


「綾、久しぶりやな!」


楓は社会人2年目で結婚し、子供が2人いるが既に手が離れてきてランチ会の参加率は上がっている。綾は最近結婚して子宝にも恵まれ、今は産前休職中ということで久しぶりに再会することができた。他メンバーは仕事や家庭と忙しいようだ。私はお店の休みさえ合わせれば予定は立てやすいので、自分が言い出しっぺでもあり、全てのランチ会に参加している。


「最近はどうなん?」


基本、集まれば自分の近況報告か、他メンバーがどうしてるなど情報共有から始まる。高校時代の友人ももうアラフォーとなり、会社員としてはベテランの域になってきている。プレ更年期にも差しかかってきており後輩の面倒やら、体調の変化など話題は全然尽きない。


「楓って今仕事なにしてるの?」


「今ね!国家資格目指してんの!」


「えっ!」


楓は昔から優秀だったが、飽き症があり会う度に違う仕事に携わっている。新しい職場に就いたと思ったら、お局さんにキレてやめたり、急に塾の先生になったと思ったら、世の中間違ってるーとか言いながら、ボランティア活動に勤しんだり、今回もぶっ飛んだ話が聞けるかと思っていてが、アラフォーで国家資格とは流石である。


「宅地建物取引士!」


「何それっ~?」


喋り込んでくると、昔のノリが蘇ってくる瞬間が多々ある。内容が分からな過ぎて笑ってしまうほどだったが、楓の近所や、知人で住宅の売買問題があるらしく、調べてるうちに資格を取る流れとなったみたいだ。楓の強い意思と行動力は未だに健在であるようだ。


「凄いなぁ。私なんて自分のことで精一杯」


綾は高齢出産にあたり、色々リスクを背負っている。腰痛が酷く、胎動があるたび吐き気があるという。旦那さんはというと、話を聞く分にはあまり気が効くタイプではないようで悪阻があった時でさえ、綾がご飯の支度をしていたようだ。


「そんなんで、やってけんのー」


楓は子育て経験者ということもあり、ズバズバ綾に食いついていた。綾はどちらかというと、強気な楓を苦手としていて、今も言い返すことは出来なさそうだ。


「でも、少子化時代に貢献してるからね〜」


「それ、遥が言うかっ!」


綾はグループの中では大人しく、控えめな性格である。楓がリーダーポジションだとしたら、綾はアウトリーダーにあたり、テンション上がって羽目を外す私達を冷静に受け止め、周りに迷惑がいかないようストッパー役だった。お酒が飲める年になってからは、目新しいお店を探してはベロベロになるまで酔い潰れる時もあった。その時も綾だけが帰り道をしっかり覚えててくれたり、忘れ物がないかの確認など母親的存在であった。綾のお陰で、私達のグループが野蛮ではなく、上品さも持ち合わしていたといえる。そんな綾だから、甘えん坊の彼氏に懐かれてしまうのは納得だ。


「辛くなったら、この楓様を召喚したまえ!」


「楓が来たら、私の旦那ビビると思う〜」


「間違いない〜あははは〜」


高校のグループメンバーは本当に個性が強く、中には2人だけでは相性が悪かったりもする。でもそれでも、落ち込んだときは助けあい、罵りあい、お互いを励ましあってきた。同じ時代を生きてるからこその悩みを分かち合ってきた。私もお店が上手くいって無い時は、口コミで広めてくれたり、新商品のアイデア出しなど、色んな場面で助けて貰っている。


「そーいえば、悟また違う子といたよ。」


高校時代に知り合った悟は、今だに遊び人健在らしい。高校グループ内でも引っ掻き回し、彼は厄介者としてちょくちょくネタにされている。


「つっきー、別れて正解だったね!」


「でも、初めて本気だったみたいで、かなり後引いてたみたいだけど、今のご主人はつっきーにベタ惚れだもんね。」


「そーいや遥、つっきーの見舞い行って来たんでしょ?」


つっきーとは要くんのお母さんで、長く病院生活を送っている。


「、、、。話かけても反応無い時間増えてるみたいね。」


「、、、そか、、、。」


「色々、健康診断とかで数値引っかかってきてるけど、つっきーは別次元だもんね。」


「次会うときは、皆でつっきーの見舞いだな!」


「そうだね!絶対の約束」


「綾は、子育ての最中かもね!」


「その時はこの楓様を、、」


「もう、いいって!」


「あははは」


私達は、誰かが苦しい話をしても、別れ際には皆前を向いている。誰しもがハッピーだらけな人生でないことを知っているからだ。皆、大小あるが苦しい経験をして今がある。全て自分の糧になっていることを分かっているからだ。次は元気なつっきーに会えるといいなぁ。

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