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「シュークリーム、3つね。」


移動販売でケーキ屋を営み、もうかれこれ13年になり、店舗を構えるまで大きくなってきた。ご贔屓さんと世間話も交わえながら、試行錯誤で新しいスイーツ作りにも励んでいる。


「遥ちゃん、またね! 今度息子の誕生日ケーキも予約させて貰うわね」


「有難う御座いましたー。またお待ちしております。」


扉まで見送り一礼が終わる頃、楽しそうに談笑する学生さんが目に止まった。笑っている姿が印象的で面影があるような、、


「あれ?もしかして要くん?」


彼は学生服に身を包み、重そうなリュックを右肩にかけていた。暫し、こちらを不思議そうに見下げていたが、


「あぁ~、母の同級の!」


「そうそう!いや〜見違えたやんー。何?部活帰り?」


要君は、高校の同級生の息子で、もう何年と会って無かった。


「いや〜。本当大きくなったわ。今何センチまでなったん?」


「173はありますね。母に自分より1mmでも大きくなれと言われてましたからね!でも、もう止まりかけてます!」


相変わらず、陽気なキャラは変わっていないようで安心した。本当やんちゃで、いつもじっとしてない子供だったから将来大丈夫かと心配していたほどだ。


「あっ!そや! 残り物あげるからまってて」


店内へ案内し、待合の椅子で待つよう声をかけた。要君は友人と帰り道だったようで、待ってる間も楽しそうな会話が聞こえてきた。


「陸さー、あれは無いわ。相手のパスがサイドに行くって分からんかったんー?」


「いや、だって18番にパスするって皆思ってたって!」


「はい、これ!お待たせっ」


要君と友人に、売れ残りの焼き菓子を詰めてあげた。 


「有り難く、頂きます!」


友人も、申し訳無さそうであったが、要君に促され2度ほど頭を下げながら受け取ってくれた。


「あ、またお見舞い行くからね〜」


「母も喜ぶと思います!じゃっ」


振り返りながら手を振り、笑顔で友人と立ち去っていった。


姿が見えなくなるまで見送ると、ポツポツと小雨が降り出した。


「今日は早仕舞いかな。」


お店の片付けを進めながら、物思いにふけていた。


「良い息子に育ってんじゃん。。。」


安堵とともに、高校時代の思い出が蘇ってきた。文化祭でダンスを踊るってはしゃいでたあの頃が懐かしい。本当に運動音痴だった私は、体育が大キライだった。スタミナ強化目的でサーキットがメニューにあったが、匍匐前進やら、ブリッジ歩きやら体育館の端から端まで往復させられた。特別、体育科でもないのに変な学校であった。いつも私はビリで、当時のグループメンバーがいつも応援に駆けつけてくれた。グループの中でも楓がいつも1番で、頭もよく生徒会にも属していた。


「おーい、何回後ろ周り失敗してんねーん」


グループのリーダー格で、場をいつも盛り上げてくれていた。周辺で笑っているのが綾とつっきーとクミボン。いつものメンバーだ。私のグループは本当にキャラが濃くて、皆それぞれバラバラな趣味なのに、漫画だけは好みがあった。新刊がでたら1人が買ってきて、読み終えたら直ぐグループで回しあっていた。しかも、好きな漫画がアニメ化され、エンディングでダンスが披露されていた。高校最後の年だったこともあり、文化祭で踊るって言い出したのは私。皆の目がひんむいていたのを覚えている。放課後に皆で振りを覚えて、何度も練習したなぁ。結局、足を引っ張ったのは私だけど。卒業以来は、暫く待ち合わせてご飯とかしてたけど、早い子から結婚、出産と続いて、なかなか全員で揃うことは無くなってしまった。私はといえば、かなりの奥手で只管相手を待っているうちにアラフォーを迎えている。正直、今はもう人に合わせるとか面倒でしかない。結婚に興味が無い訳ではないが、マッチングアプリとか始めるのも億劫である。自然に出会えることなんて無いんだろうか。お客さんの紹介で出会った男性もいたが、何度かお会いして連絡が来なくなった。お久しぶりですとメールをしようと試みたが、焦りがない分いつでもいいかと今になっている。高校の友達は、今や主婦業、技術職、営業職、看護、福祉と多種に渡り社会人となった。子育てが一段落すると、子連れでランチに参加したり、しなかったり。今ではアラフォーということもあり、美容に気をつかっている子は今でも綺麗だか、年相応な子もいる。私はその中でもストレスを受けてない分、まだ綺麗でいると思っている。1人は早くに体を悪くし、ずっと入院続きな子もいる。さっきの要君の母がそうだ。もう、高校生だなんて、私には本当出会い無いもんかね。。楓なんて早めに結婚して離婚して、直ぐ再婚して。私なんて、一度もそんな機会無かったんですけど。でも寂しいとか思わない。声かけたら、2人は集まるし、早めに予定したら旅行だって行けたこともある。友達の子供の成長だって、嬉しくてたまらない。妬みとか取り残され感とか全く感じたことはない。いつも皆からは外れていたから、特別気を遣われたこともない。


「ピロン、ピロン」


携帯が鳴って、懐かしい名前が表示された。


「お久しぶりです。長らく連絡出来ず申し訳ありません。あれ以来、同級の子と再会し昔話もありながら盛り上がってしまい、結婚することが決まりました。私自身こんなことになるとはと、驚いているかぎりです。遥さんにご報告が遅れて、本当に申し訳ないと思っています。遥さんの御多幸をこれからもお祈り申し上げます。またお菓子買いに伺いますね。」


わー。律儀な方だなぁ。そう。とってもいい人で気の利く人だった。でもただそれだけ。親にとっては安心できる人かもと思ってたけど、そんなにうまく心が付いてくるものでもない。久しぶりなんてメールしなくて良かった。


「おめでとうございます!次は私もそんな再会があるかもなんて期待しちゃいます。なんて女子高なんですけどね。いつでもお待ちしております!またお祝いさせて下さいね。」


これだと少し嫌味チックかな?でも少しも悲しくないということは、やっぱりその程度か。今度、常連さんへのご報告忘れないようにしないと。さて、なんか一段落感が半端無いな。こういう時は高校の友達に会いたくなるのは何故だろう。


「そろそろ、ランチしませんか?」

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