私のキライな目
8部 私のキライな目
「そんなとこさわらないで、変態!」
「変態?! なにを言ってる女。ココを触られて喜ぶおまえの顔が見たいんだ」
「古代バビロニアに伝わる悪夢食鬼ベビロンは知ってるんじゃないの、あんたなら」
「そんなヤツ知らん!」
「マヤのマヌコス」
「知らん!」
「エジプトのクリティーポス」
「知らん!」
「ポナペのカカテマンガ」
「知らん! いい加減にしろ! なんの時間かせぎだ」
「時間かせぎ? あなた、なんかおびえてない? あんたが存在してるのよ、あんたの天敵だって、存在するはず!」
「えぇえい、うるさいわ!」
「イヤッエッチ! 掴まないで変態」
「バクは来るんだ。きっと来る!」
「ええぃまだ言うか黙れカナ!」
「ヒッ」
投げられて床にたたきつけられたカナが倒れたまま。つぶやいた。
「夢喰い、悪夢喰らい、ナイトメア・イーター、バク……どれも皆、懐かしい名だ」
「はぁああ。なんだと」
カナにリリコが飛びかかり、かぎ爪が飛んだ。
それをジャンプして避けたカナは、四足の獣のように着地すると顔を上げた。
「久しぶりの獲物は、かなりの大物じゃないか」
カナの声とは違う。男のような女の声のような奇妙な声でカナがしゃべった。
あれは、カナではない。
目を見開いた。カナのネコの目を大きくしたような目は?
目だけでなく口が大きくさけ、牙も見える。
そして大きな長い舌を出し舌なめずりをした。
「ヒイッ、見るな! 私はその目が大キライなんだああ」
リリコは私を捨て、顔を手でおおった。
「ウガアァ」
大きな目の鬼顔と化したカナは跳躍し、リリコの肩に乗ると両腕で頭を掴んだ。
「その恐怖にひきつった顔が好きなんだ」
「いゃあぁああ」
「いただきま〜す」
ガッ
頭からまるかじり!
「うあぁ、こりゃハブ対マングースなんてもんじやないな。一方的に喰われてる」
いつの間にかオーナーが来て私に上着を。
グキッ、バキ、グチャグチャ
「ウッ吐きそう……」
気がつくと目の前で奇顔の少女が人をいや魔物を食っている。
「食った喰った、ありがとよ。お嬢ちゃん」
食べ終えて立ち上がったカナ? が、倒れた。
「今のは、あれ夢魔食う鬼……なのか?」
「じゃないの……でも、あれは」
「カナちゃん……」
倒れたカナは寝息をかいていた。
「やっと安心して眠れるようになったんだね」
バタッ
「安田くん! 大変安田くんの出血、危ないわ」
「ヤバ、救急車だ、ソフィちゃん。電話を」
「オーナーも持ってますよね」
「あ、上着。上着のポケット! 上着がない!」
「あわてないで、上着は私が……あ、怪我に効くカードも」
「それ、効くの?」
「多分……」
リリコが喰われてしまったので、カナちゃんの素性も本名もわからないままだ。
とりあえず、記憶がもどるまでウィッチ・パラダイスで働いてもらってる。
家は、ソフィアさんの部屋のある五階の空き室に。
ウィッチ・パラダイス事務室。
お茶タイム。
「不思議な出来事だったねソフィちゃん。ホントにバケモノがこの世に居たんだね。あの僕の作り話からアレ出てきたのかね。アレはいったい」
「夢喰鬼。そうですね、あの話はもしかしたら、オーナーがヤツに言わされてたのかもしれませんね」
「そうだったのかな? 我ながらうまい話と思ってたんだけどね」
おわり