廃墟の夢魔
6部 廃墟の夢魔
裸の猿とでもいうか、ソフィアさんがいうゴブリンのようなオーナーが言う使い魔のあとを追いかけているが、あの生物を他のドライバーは見えないのか?
あんなのが道路を走ってるのに、皆正常に走ってる。
ヤツは、人けのない道に入った。
しばらく走ると廃墟が見えた。
そこにヤツは飛び込んた。
「ここ、有名な心霊スポットよ」
「病院の廃墟ですね、いかにもな場所だ」
車を降りて、病院の入り口に行くと、ヤツが入り口の前で座って、こっちを見てる。
「お待ちかねだよ。廃墟がアジトなんて、まるで下賤な人さらいだな。夢魔のくせに」
院内に入ると、広々とした受付に待合室。廃墟だが昔は大きな病院だったのがわかる。
待合室の奥に彼女らが居た。
渋谷カナは椅子にロープで縛られている。
その横に立つ綾樫エリス。
あのマンションで会った時とは感じが違う。
なんかイヤらしい笑みを浮かべている。
「お揃いで来ましたね、歓迎しますわ」
「安田さん、みなさん。逃げて下さい、わたしはもうどうなってもかまいません!」
「わざわざ来てくれたのよ。カナ、逃げろなんて言わないの。彼らは私の正体を知ってるのよ」
「やはり、あなたは人でないもの」
「まあたしかに。でも、ホントあなたたちはおせっかいというか、もの好きというか。なんで、こんな小娘ひとりに。命を失うかもなのよ。何年、生きても、わからないわ人間って」
「その、人間の姿のあなたは、人間にあこがれているんじやないの。本当の姿は醜いバケモノだから」
「笑わせないでよ。私が好きでこんな姿でいると思ってるの。あなたたちには特別に私の美しい本当の姿を見せてあげるわ。でも、ソレを見たらあなたたちの命は、お・わ・り」
シュウウウ
綾樫エリスの服が空中にとけるように散っていき、その体は二倍くらいに大きく。
天井が低かったら、頭が突っ込んだだろう。
ソフィアさんが言ったような醜い姿ではないが異様だ。
顔は基本西洋系の銀髪美女だが、額には大きな一つ目、髪の間から出るとがった長い耳。カギ爪がある飾りのような小さな羽根が。
そして大蛇のような尻尾が動く。
そして女性の裸体の股間にそそり勃つそれは。
「あんた工事前のオネエか!」
「オーナー、アンドロギュヌス(両性具有)って言って下さい」
「あの世へお裄き!」
エリスの銀髪が伸び、オーナーの腹を直撃。
オーナーは壁まで飛んだ。
次にカギ爪の腕が、ソフィアさんに。
「グッ!」
「安田くん!」
「ソフィアさん、……」
「安田くん、私の盾に……」
「ホント、人間はおろかね。わざわざ自分から。女、あんたは、まだ殺すのやめるわ。よく見ると私の好みじゃないの。じっくり味わってあげるわ、これでね」
「夢魔、私たちが何も用意なしでここへ来たと思う」
つづく