エリス
4話 エリス
「悪夢喰らい……」
「他に『夢魔喰らい』とか、『夢食鬼』とかある。わかるかな。むまくらい、むまくぅ、まくぅ。からのまくら」
「枕にそんな元語が?」
「まくぅが、にごって、ぶまくぅ、ばぁくぅ。バクって、いう。そんでか、昔の人は夢喰いと獏を一緒にしたという」
「それ、ホントですか、オーナー?!」
クルマは今、渋谷カナが住んでるというマンションの前に。
けっこう古い建物だ。築ン十年とか。
ボクが彼女を連れてクルマを降り、同居人という綾樫エリスに会うことに。
さすがに三人で押しかけるのもと、オーナーとソフィアさんの二人は車中で待つコトになった。
「ここの4階です」
エレベーターとかないのか?
4階まで、階段なのかココは。
「一緒に住んでる綾樫さんってどんな人?」
「わたしより年上で、優しくてスゴく綺麗な人ですモデルの仕事をしてるとか」
おお、そうなんだ。変な期待をしてしまう。
4階くらいと思ったが運動不足か、けっこう4階まできつい。
彼女はなれてるのか、疲れたなんて顔はしてないでたんたんと登る。
階段からすぐ近くの部屋だ、404。
ドアフォンを押そうとした時、ドアが開いた。
「あ、カナ。カナ、何処に言っていたの心配していたのよ」
丁度出かけようとしていたのか綾樫エリスとバッタリ。
心配するなら彼女にケータイとか。
せめて、住所を書いたメモとかを持たせれば。
しかし、ホントに綺麗な人だ。
名前からするとハーフかな。日本人離れした美しさだ。
「ごめんなさい……実は」
渋谷カナは、ボクとの事情を話した。
「そうだったの。色々迷惑をかけまして」
「いや、じゃボクはこれで」
「あのよかったらお茶でも」
「いや、またの機会にでも。下に人を待たせているので。ソレに出かけるのでは?」
「あ、たいした用では。そうですか、じゃいつでも遊びに来て下さい。歓迎しますわ」
ヤバイな。あの人、見つめられてたらボーッとしてきた。
五秒以上顔を合わせてたら、どうにかなりそうだ。
「あのヤスダさん!」
二階まで降りかけたとこで、あの人が。
「戻って来ましたね」
「早かったわね、留守だったのかしら?」
「どうしたの。やけに早かったね安田くん」
「いや、べつに。綾樫エリスは、ものすごい美人でしたよ」
「やっぱりそうだったか。名前からして、そんな気がしたんだよね。僕が行けば良かった」
「オーナーじゃ話がややこしくなりません」
「ソフィちゃん。ヤキモチ? うれしいなぁ」
「どうして、私がオーナーに。意味わかりません」
「まあいいじゃないですか。とりあえず事務所に戻りましょ」
「もっと長居してエリスちゃんをさぐってくればよかったのに。あやしいとことかなかったかな? おっと、そこ曲がれば国道か」
「オーナー。すぐにエリスさんに会えますよ」
「おあ、何するヤスダァ!」
「危ない!」
キィイイー ガシャン
つづく