25 大学不合格を祝福された
「今日はなんといいお知らせがあります」
「なんとイジメをしていて謝罪もしないクズが大学に入学できませんでした」
「ざまあみろですね」
「これもみなさんのおかげです、ありがとうございます」
イジメ被害者の水谷が笑顔で動画に出ていた
これほどの笑顔はないというくらい幸せに満ちていた
・・・自分が被害者というか加害者でなければ微笑ましいと言えるのかもしれない
一番最初の動画は痴漢が冤罪だと判った後だった
「このクソ野郎に苛められていました」
とイジメの動画を動画サイトに投稿された
裁判所というのは学校や加害者を守り、被害者を守らない
それが動画投稿の理由だった
なんでもイジメをされた高校生が声をあげても、~あざだらけになった写真と医師の診断書を提出したにもかかわらず~ 裁判所はイジメを認めなかったことがあったそうだ
そしてその被害者は20歳を超えても裁判をつづけているそうだ
今現在は最高裁で争っているとか
そんな先輩?のテレビの特番の録画を動画で上げて
「裁判所に、学校に、教育委員会に、いやこの世に正義はない!」
と裁判所と学校と教育委員会に絶縁状を叩き付けていた
そして自力で正義を貫こうと決心しそうだ
世の中に不当を知らしめるために動画をアップした
もうすでに人生をメチャメチャにされたのでこれ以上何が起っても全然問題がない
動画の中でそう言っていた
おかげでネットでは酷い言われようだった
「偽善者」
「自分よりも弱いものを見つけてイジメるしか能がない卑怯者」
「謝罪すらしらぬ恥知らず」
・・・その通りと思う反面、いや違うだろうとも言いたい
しかし動画を見た人間は肯定一択だった
なんでも同じようにイジメられた経験があるとかなんとか
おかげ?で
「こんな人間は死ねばいい」
などというのは可愛いもので
「このクズの家はココです」
「家の写真をゲットしたので載せます」
「このクズをそだててクズ親の写真ゲットです」
と住所と写真といった個人情報がネットで晒された
え?
法律違反?
そんなものは過去のイジメ加害者を法律で裁いてから言いやがれ!
が合言葉になっていた
なんでも起訴しようとした途端、何者かのリークにより個人情報どころか家族情報までさらされたそうだ
それどころか子供がイジメに遭う始末
その際イジメを見たはずの生徒は
「なかよくしていましたよ?」
と皆口をそろえていたんだとか
今はネットが発達しているので小学生すら ~いや小学生ゆえに純粋に悪を許さないとも言う~ 必要な情報を得られる
悪は何やってもよい
それがネットでの正義
当然のことながら悪とされている存在は一瞬で拡散される
もはや無法地帯と言ってよかった
そりゃ大学入試に失敗するわな、と思う
「でもまだまだこんなものではボクの気持ちが晴れません、みなさん今後も力を貸して下さい」
そう言って水谷が動画の中で頭を下げていた
まだまだ地獄は終わらないようだった




