２５話 決戦
フレアのように空に浮かぶ炎の球体が肥大化し、雲を押し広げる。
それを合図と見たのかアモーラが遂に功成にでようと皆に指揮を振るった。
「今です！」
「ティラさん頼みます！」
アモーラの指揮を受け、ケンタがティラに合図する。すると、ティラは頷いてゾアスと共に姿を搔き消した。
「ラキウス！」
「もう位置に着いてるヨ！」
ケンタの後方に位置取りしたラキウスが言い返すように返答していた。
また、その更に後方で何やら準備をしていたメノアとその肩に手を乗せてすまし顔をしているカナリも顔を見合わせて頷く。
「タイミングは私に任せるのですね。
あなたは、自身の魔力制御と威力の底上げに注力して」
「了解……！」
メノアは、手を突き出し魔力を手へと収束させていく。
その魔力の流れはカナリから成り立っていた。
「ナニをするつもりか知らないが、このワタシを止められると勘違いしているのならタイマンだ！
圧倒的チカラには誰もが御しられ、反することなど許されないのがこのセカイ。さっさと受け入れ、ワタシに殲滅されるがいいッ！
どうせすぐにそうなるというのに、何故キサマラは私に歯向かうのかリカイに苦しむ！」
「分かり切ってることを聞くなよ。お前なんかに俺たちが負ける訳ねェってんだよ！」
指を差してドヤ顔を決めるケンタにイメガの怒りは頂点へと達していった。
「よし！ 始めろ！！」
ケンタは体を光を増幅させてタクトを振るう。
「ナニッ！！？」
しかし既に準備は整っていたようで巨人像の手足が泥でできた鞭で縛られ、身動きが取れずにいた。
「ナニをしたッ！！？」
泥の鞭が地面からせり上がる一角に仁王立ちで佇むゾアスと礼儀正しく隣に立つティラがいた。
ゾアスはトラップ魔法の『ベータ』を使用していたようで泥のせり上がる地面には茶色の魔法陣が展開されていた。
「俺がこのデカブツに与える影響が微々たるものであるのは早々に自覚できた故、小人なりの策を講じたまでのこと。
ティラ殿、感謝なのである」
「お役に立てて良かったです」
「フッ……アホ、それだけな訳ないだロ」
赤い魔法陣を前に弓を引いていた不敵な笑みを見せるラキウスの手が矢を放った――。
矢は四本あり、それぞれ二本ずつ巨人像の左右の膝へと飛んでいき、炎を纏ってやがて鳥の姿を成す。
「クアッド・フェニックスフェザー！」
炎の鳥は、巨人像の膝へと向かって爆発を起こす。
その衝撃は凄まじく、予想以上の余波を持ってして巨人像の膝を曲げた。
それは次から次へと押し寄せるスイッチとなる。
「初手は上出来だ。
あとは、俺も少し花を添えてやろうかなッ！！」
でたらめに地面を抉りながら駆けて巨人像へと正面から突破していくケンタ。
「ちょこザイなァアアアアア！！！」
口から光線を放ち、ケンタへと向ける。
「ハッ、中にい過ぎて気でも狂ってんなら、もう俺を止められやしねェな！！
《見出す希望》！！」
しかし、光線がケンタへと当たる瞬間、ケンタから放たれる眩い光が光線を阻害し相殺した。
「行くぜ……！
《闕歩・空拠の勘》！！」
瞬く間にケンタは巨人像との距離を零にし強烈な蹴りを巨人像の顔面へと直撃させる。
「グヌッ！！？」
すると――巨人像は両足が使えないまま膝を付いただけでなく、体を仰け反らされて視界が正面を捉えられなくなっていた。
「今だッ！」
「メノア！」
「はい！！」
ケンタが振り向いて合図を送ったことにより、カナリがメノアと準備していた一矢を起動させる。
メノアが巨人像に向ける両手は光輝いており、それを解き放つように膨大な魔力を巨人像へと放った。
「レグレッション・バースト！！」
メノアたちの体を余裕で覆い隠せるほどの質量を持った魔法の線は斜めに上昇するように進むが、途中でホップし巨人像の顔へと向かっていく。
「ポロもやるのです！
ポロブレス！！」
その間、ポロの口から吐く光線も共に在った。
最後の魔力を振り絞るように吐き出された魔力は、メノアの魔法と並列に二つの直線を作り出す。
レグレッション・バーストは、魔力を溜め込む量によって威力を上げるわたしのエクストラ魔法。
カナリちゃんの魔力と合わせて威力を底上げして貰ったこの魔法はこれまでの魔法とは別物！ 相手の魔力だって押し返せる！！
メノアの考えは当たった。
ケンタの攻撃により口からの光線は出せないようだったが、抵抗するように巨人像の目から放たれる光線を押し返し、顎を中心に魔力の本流を直撃させる。
これにより巨人像は光線を出すことができなくなっていた。それを読んだうえでのカナリの策。
これなら、邪魔はないのですね。
――バロウ！
カナリが見上げる空の上では、もう炎の球体は消え去っており一人の少年が両腕を天へ掲げて佇んでいた。
「ありがとな、皆――」
（ユウ、全力全開だァッ！！）
（応！）
バロウの持つ剣は紅い炎を燃え上がらせ、その刃は雲の上にまで上っていた。
また、魔法の本流を受けて視界が上がったイメガの目にもバロウの姿が映った。
イメガは全身の血管が浮き出てその場に居続けるだけで苦痛なはずだが、それを振り払うかのようにバロウを恫喝する。
「バロウ……貴様ァ……！
そんなもので私を倒せると思ったか！ そんな矮小な分際で少しでも力を衰えさせられるとでも思ったか！ ただの踏みつぶされる対象が王となる私に刃が届くと思ったか！
自惚れるな人間ッ！！ 今宵、この場所から私の歴史が始まるのだ、誰も私を止められはしないのだッ！！」
ブチブチと音を立てて手足を縛る泥を引きちぎり立ち上がる巨人像は、強烈なまでの魔力と覇気を纏っている。
全ての希望やけじめを断ち切る意味で自分を見下ろし目が合ったバロウだけを視界へと
入れた。
「大地も――海も――空も――この私にひれ伏す一部。
ここにいる者全員、私を前にして生きて帰れると思うなァッッッ！！」
まるで待っていたかのように巨人像から放たれる衝撃波が大地を張って未だ残る者達を吹き飛ばす。
「私に掛かれば先程までのはただの遊戯、お遊びでしかない！！
しかし、待っていたとも言えよう！ お前がいずれ私に刃を突き立てる日が来ることは予言にあった！
だが、予言を訊いた時に思った！ そんなもの、恐怖の対象に成りえない。私の野望はそんな事で阻まれるほど安っぽくはないとな！！
そして今、貴様はここで私に刃を向けている！ 面白い！！
ここで貴様を葬れば、もう何も私を隔てる者は無いというのだからッ！！」
高揚しバロウに語り掛けるイメガに対し、バロウは逆に冷めたような冷たい目をしていた。
「自分の野望の為なら他の事などどうでもいいと、他人が倒れようが苦しんでいようがお構いなし……。
お前は、俺の嫌いな奴等と何もかもそっくりだ！ そんなんで、欲しているものを掴みとれる訳ねェだろうがッ！！
俺たちは、お前を阻む。帝国にどれほどの恨み辛みがあるかは知らねェが、お前が傷付けたものの代償は償って貰うぜ！ 殲滅の巨人像、お前も含めてなッ！！」
「貴様にそんな事ができるとでも思っているのなら、バカも休み休み言うんだなッ！！」
その瞬間、巨人像全体を覆うほどの巨大な蒼いシールドが現れる。
バロウが呆気にとれているのを見て悦に浸るようにイメガは盾の説明をつらつらと述べていった。
「これは、私の至高の盾。何者をも阻み、私へ向けられる刃を幾重もへし折ってきた！
今回も、貴様のような凡人から巨人像諸共私を守る絶壁の盾なのだッ！！ これるものなら来てみろ！ さすれば、傷付くのは貴様の方だッ！！」
チィ……綿密に練られた卓越された魔力圧によるシールド。
刃が通るかどうかは五分五分。抜けたとしても、それほどの威力を与えられない。
巨人像は、魔力阻害を持つ体。大気中の魔素を取り込み、紋章の力も増幅させてきたのに、まだ届かねェのか！！？
まだ刃を振り下ろしていないバロウが悔恨に染めた間、地上で波打つ衝撃波によって吹き飛ばされた面々と大地の中、二人未だ立っている者がいた――。
「アンタは、何も心配しないでそのまま行っていいわよ」
それをバロウは俯く中で確認する。
地上で一人輝かしく両手を光らせて掲げるロゼの姿を。
そして直感するのだった。自分はこのまま太刀を振り下ろせばいいのだと。
「エターナル・シャイン〈改〉――！！」
巨人像を覆っていたシールドを更に覆う光が在った。
それは、同じ盾の役割を担うのではなく、内部で構築された魔力を魔素粒子へと分解し霧散させていった。
「ナニッ！！？
どういうコトだッ！！」
イメガは、魔力の低下に伴い再び呂律が回らなくなっていた。
ロゼが魔力切れを起こして倒れながら巨人像を覆う光が消えていく中、巨人像にも動揺の色が見られ、それを不敵な笑みでロゼの隣に礼儀正しく佇むティラが見守っていた。
これは、流石アモーラ様とタナテル様と言うべきでしょう。
タナテル様が事前に予見した未来を防ぐべく、それを成しえる可能性のあったロゼ様の魔法を増強し、万が一の時に私たちを振り払うだろうと私を保険としてゾアス様との任務以降その時を待ち構えて瞬間移動をさせたアモーラ様の策略が今嵌まりました。
これで、心置きなくバロウ様は忌々しい邪悪を断ち切ることができそうです。
「行くぞ、イメガァアアアアア！！！」
「――消されようがカンケイナい！ またシールドを…………！！？
魔力が……もうほとんどないだと！！？ 私の裁量が狂うはずなど――」
イメガは、先程までのケンタたちの攻撃により抵抗して魔力を大量に使わせられていたのだった。それに気付いたイメガは、ハッと再び下りてくるバロウを見る。
「クソがァ！！
エンボスの盾！！」
しかし、それでもとバロウとの間に巨人像の顔一つほど庇えるほどの六角形の盾を作り出す。
「ワタシにカてると思うなァ！ ニンゲンがァッ！！」
それは、まるで巨人像が言っているかのような悲痛の叫びに思え、殺気は昏い憎悪を纏った魔力のようなのものとなってバロウへと向けられる。
「――《超大天・炎煌・天叢雲剣》！！」
バロウが両手で持ち、降りてくるにも関わらず未だ雲の中に刃の切先がある多大な炎を纏った大太刀は、雲から引き抜かれていくと同時に太陽の日差しを島の中へと降り注がせる。
そして、雲に亀裂を入れながら長く太い炎の太刀はバロウによって振り下ろされイメガの盾と衝突した。
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ！！！」
「キサマに、ワタシのタテをヤブルことはフカノウだッ！！！」
亡霊のような巨人像の魂とも呼べるものがシールドの奥で煽るようにバロウに「フカノウダ」と連呼する。
「ク――ッ！！」
イメガの盾とバロウの太刀は激しくバチバチと音を立てながら島中を震撼させ、魔力を暴走させるように放っていた。
バロウの仲間達は、巻き起こる暴風や魔力圧に耐えながらもなんとか体を起こして見守ろうとしていた。
そんな中、地上のなぎ倒された木々が風で飛ばされている場所でやれやれと腰を落とし大剣を腰に構える男がいた。
「まったく、最後まで世話の焼ける……。
奥義シリーズ ２ 《断絶》！！」
男は、くすんだ黄色い髪を靡かせながら目にも止まらぬ迅さで振り上げる大剣で巨大な斬撃を放った。
その斬撃をバロウは危険察知し、横目で見るもののその場を離れることなく斬撃を待ち、それは即ちイメガの盾の破壊を待つに等しかった。
斬撃は、易々とイメガの創り出した『エンボスの盾』を破ったのだった。
よって、バロウを阻むものは一切無くなった。
「行くぞ、サクラッ！！」
「うん！！」
バロウは再び太刀を振り上げる。そして、その太刀はバロウともう一人――バロウの右隣でサクラが持っていた。
「何故貴様が……！！？」
「これで終わりだ、【殲滅の巨人像】！！ サクラの過去を返しやがれッ！！」
「「咎桜・天羽々斬――！！！」」
巨人像を斬る瞬間、俺とサクラの二人とイメガの目が合った。
イメガは俺たちを恐れるような顔をして見ていたけれど、俺たちが持っていた炎の太刀とは関係なく俺の隣は温かく確かにサクラがいると温もりが証拠づけていた。
そして俺たちは、息を合わせるように魔力の霧散で白い光景が広がっていく中で殲滅の巨人像を真っ二つに断ち切った。
過去と現在の繋がりを断ち切るのと同じく巨人像が二つに別たれた頃にはもう俺の隣の温もりは消えてしまっていた。
しかし、俺は最後に確かに聞いた気がした。
「ありがとう、皆さん」
それは絶対サクラの声だった。
きっとサクラは俺に魔力を流し込んだ際に魂の欠片を残して行ったんだと思う。
やり残しを見過ごす性質じゃなかった訳だ。
「約束は果たしたぞ、サクラ」
◇
◇
◇
目の前が眩しくて徐に目を開いた。
すると、少しばかりの人垣ができていて面倒そうに体を起こすことになる。
「お兄ちゃんが起きました！」
「あら、今回は随分と早い起床ね」
「ちぇ、悪戯でもしてやろうと思ったところだったのによ」
「なんなら今からでもやっちまうかヨ？ どうせ疲れて身動き取れそうにないだロ」
「止めるのである。それが今回の大取を努めたバロウ殿にその仕打ちはないだろう」
「バロウ様、魔力がもうあまりないので回復魔法は難しいですが、わたし自身の抱擁でしもの世話までさせて頂きます」
「なっ、アモーラふざけんな！ バロウの世話はおれがする！」
「マスターマスター！ ポロが安らげる場所まで運ぶので肩をお貸しください！」
「アンタの肩は低すぎでしょ。バロウ、仕方ないからわたしが肩を貸してあげなくもないけれど？」
「フフフ、バロウ様は皆様に愛されていますね」
「っ…………」
無口な者も含めて皆元気そうだったが、やっぱりサクラの姿はどこにも見当たらなかった。
あいつは、過去に戻ったのだろうか。それとも――
一部では喧嘩でも始めそうな賑わいを見せていた頃、俺たちのもとへやってくる一同があった。
それは、海へ逃げた島民の面々であり、その先頭で俺たちを見上げていたのは少々疲労が顔色に表れる杖を突いた婆さんだった。
どうやら何か言いたいらしく、恥ずかしそうに後ろでやり合おうとしている者達も静かになった。
「島を救って頂き、誠にありがとうございましたぁ……」
弱弱しく、されど一同を代表するように頭を垂れる。その婆さんに合わせて後ろにいる島民達も深々と頭を下げていた。
「いや、俺たちがやりたくてやった事だ。気にすんな」
「そうはいきません。島は今こんな状態じゃが、いつかお礼をさせて頂きたく」
「……一応覚えておくぜ」
どこか名残惜しいように礼を告げて去って行く婆さんの背中を俺は見ていた。一同はどこか残念そうだったが、婆さんだけはどこか違ったように思えたからかもしれない。
どちらかと言うと誇らしげのような、やり遂げた、という印象を受けた。
「トガ婆、大丈夫かい？ 俺がまたおぶろうか？」
「年寄り扱いすんじゃないよ、儂は今でも現役さ」
去り際の科白を訊き、俺は何故かサクラが帰れたのだと思った。きっと、母親や皆のもとで幸せな生活を送ったのだと。
◇◇◇
「まったく、アイツも甘いな」
「あの子に任せたのはあなたでしょう？」
アレンとヨゾラが海岸近くで倒れていたイメガを発見し愚痴を零していた。
イメガは体がぼろぼろになっており、水晶の中で魔力を吸われ続けたことによる損傷がひどく表れていた。
嗚呼……何故だ…………。
我等が帝国から受けた迫害を、傷を、鞭を、全てを上書きするように振えると確証を得た力だったはずなのに――。
『貴様の父が元怪盗ＺＥＲＯである事が確定付けられた。証拠も残っている。
よって、イメガ・スキータ――貴様を国外追放の刑に処す。貴様の持つ資産も全て差し押さえとなる』
『待ってくれ！ そんなのは知らない、私は関係ない！』
『我等は帝国の法に基づいて刑を執行している。大人しく従わないというのなら、【帝国裁判所】にて更なる重罪を課せることも考慮しなくてはならくなるぞ。
これは、貴様が貴族ゆえの譲歩なのだ』
あの日、私の亡き恋人であるコンの映る写真立ても押収された。
父が怪盗などをやっていたなんて事は知らなかったが、証拠品の数々が父の書斎から出てきたことで信じるしかなかった。
しかし、それとは別に父の書斎でこの島で眠る殲滅の巨人像の資料も発見した。
私は亡き父への恨みを果たすことはできないと、帝国への復習を誓ったというのに――
「私は、この行き場のない憎悪をどこへ向ければいいというのか……」
泣きながらにイメガは悔しんでおり、その泣き顔は見せまいと腕で隠していた。
「そんなもんに答えなんざねェよ。
けどな、今回はやり方を間違えた。
いや、間違えさせられたとも言えなくもないんだろうがな。
もしもの話は好きじゃないが、贄以外の運命がお前にあったなら少しはマシだったのかもな」
波打つ海の水がイメガの慟哭を掻き消そうとしていたが、それは叶わなかった。
◇◇◇
疲れながら粉砕されたホテル近くで眠そうに腰を下ろす俺たち。
既に朝日が昇り一日中休まず戦い続けていたのが尾を引いたのか全員くたびれていた様子で、かくいう俺も同じ心持ちであくびをする。
「お兄ちゃん、結局温泉はどうなったの？」
寝言なのかメノアが虚ろな目で小言を呟いていた。
「ああ？ この状態で温泉がやってる訳ねえだろ。また今度だまた今度」
「えぇ……」
これに反応したのはロゼであり、全身汚れているから気持ちは解らないでもないが、肩を落として残念そうな表情をしている。
「仕方ないだろ。それより、起きたら島の復興の手伝いとかやらないといけないしな」
「そしたら、温泉も無事と判るかもしれませんね。
その時にはマスターと一緒に温泉に入るのです！」
ポロは疲れを知らないのかワクワク顔で俺の前に立っていた。
俺はそれを見て愛想笑いをするが、冗談ではないらしく俺の股の間に座り体を預けてきた。
また、ツッコミもできないほど疲れていたのかもうメノアとロゼは俺にしなだれかかりながら眠ってしまっていた。
「カナリ様も割って入ってきてはどうですか？」
「……今は、やめとく」
カナリの返しにティラは含み笑いをしていた。
しかしそれを聞いていたアモーラが、
「ならわたしがお先に行かせて頂きますね」
「あ、待て！ おれも！」
同調するタナテルを含め、バロウたち四人の間に入ろうと移動を始めるので、カナリが悔しそうに身を震わせるのであった。
「あ、なんだお前等！？ 暑苦しいぞ！」
「バロウ様、今回わたし頑張りましたのでご褒美が欲しいです。
できれば、子供ができるような熱いものでお願いしたいので・す・が」
「そんなのおれが許さないからなっ！」
「だぁ、俺も寝させろぉ！！」
バロウたち一向は、各々休息をとってからティラの瞬間移動でスリット王国へと帰国しまた修行の日々へと戻っていったのだった。
長々と『運命辿る少女と殲滅の巨人像』編にお付き合い頂きありがとうございました。
今後といたしましては、本編の第五章の方へ戻っていきたいと思います。
今後とも読んでいただけましたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。
