2、縛り
シラヌイの宮殿は、昔テレビで見たヨーロッパの王宮にそっくりだった。
司が視線を上げると、ミクルの肌の白さがヴェールに透けて見える。
司は思わず目を逸らした。
「何か、着る物はないのか?」
「それならば、これを」
司は神官が着ていそうな服を手渡された。
着てみるとサイズはぴったりだった。
「ミクルはその姿のままで良いのか? ちょっと目のやり場に困るんだが」
「それじゃあ、服を着ますね。召喚の儀の正装なのですが、やはり恥ずかしいです」
ミクルはそう言うと、シンプルなワンピースに着替えた。
「勇者育成と言ったが、俺は何も出来ないぞ?」
司は戸惑いながら言った。
ミクルは、ふふふと笑った。
「司様はフォロースキルを沢山身に付けられる方です」
「フォロースキル?」
「はい、宝箱感知や、薬草鑑定、補助魔法などです」
ミクルの言葉に、司は呆然とした。
「私はまだ勇者見習いです」
ミクルは話し続けた。
「選ばれた者だけが、16歳の誕生日に冒険者として登録されるのです」
司はミクルに聞いた。
「まだ、そんな歳なのに?」
「はい、だから育成係が必要なのです」
司は、16歳で勇者なんていう重い責任を背負わされるなんて、可哀想だと思った。
司はふと下を向いた。
すると、司の真下にまだ魔法陣が光っていた。
「ああ、魔法陣を消しましょうね」
ミクルは不思議な言葉というか歌と言うか判別のつかない声で何かを唱えた。
声に呼応して、魔法陣は消え去った。
「司様、王宮の皆様にご紹介しなくてはいけませんね」
「待った、俺はまだ引き受けるなんて言って無い」
ミクルは困っている司を見て首を傾げた。
「私の呼び出しでこの世界に来たのですから、反抗は出来ないはずです」
「いや、断る」
司がそう言うと、左腕が痛んだ。
「痛! 何だこれは!?」
司は左腕の袖を捲ってみると、魔法の紋章が輝いていた。
「私の魔法です。反抗すると、紋章がその身に食い込みますよ」
ミクルはうっすらと笑っている。
司はミクルに従うしか無いと覚悟をきめた。
「俺はどうすれば良い?」
「私について来て下さい」
ミクルは部屋を出た。
司もその後を歩いてついて行った。