4 愛すべき家族
「ただいま――おふっ!」
「にいちゃん、お帰り〜!」
玄関を空けた途端に腹にダメージが入った。買い物袋を死守してなんとか踏ん張るが、追加とばかりにダイブしてくる弟を受け止めて俺はため息混じりに言った。
「頼むから普通に出迎えて」
「むりー」
「ねー」
くすくす笑う双子の優芽と遊佐。今年で小学一年生になるが、家ではまだまだ元気に甘えてくるようで何よりだ。
「兄さん、お帰り」
「ただいま、隼人。母さんは帰ってきてる?」
「1度帰ってきたけど、すぐに仕事に戻ったよ」
「了解。んじゃ、ちゃっちゃと夕飯作るか」
「お願い。あ、お風呂掃除はやっといたよ」
「助かるよ」
まだ中二なのに心強い弟の隼人。俺とは違って父さんの遺伝が強く出てイケメンに生まれてきた上に性格もイケメンな弟は自慢の弟ですよ。
「あ、お兄ちゃん。お帰り。栞はよく寝てるよ」
「悪いな、受験生なのに」
「いいよ、お祖母ちゃん帰ってから少し面倒見てるだけだし」
最年少の末娘である、栞はまだ生まれたばかり。本当なら母さんが面倒見たいだろうが……仕事があるので俺達と祖母で交代で面倒を見てるのだ。そして、その栞の頬っぺをつんつんしているのが、長女の琴音だ。母さんに似て美人さんになってきてる妹なのだが……
「それはともかく、せめて何か着なさい。風邪ひくよ?」
「えー、だってブラとか面倒なんだもん」
素っ裸で家の中を歩く妹にそう注意するけど、受験勉強もあるだろうしあまりキツくは言えない。
「なら、カーテンちゃんと閉めなさい。不審者が見てたら困るから」
「お兄ちゃん過保護だねぇ」
「可愛い妹だからね」
そう言うと何故かドヤ顔する琴音。そんな妹の頭を撫でてから夕飯の支度をする。お風呂掃除は当番制にしてるけど、それ以外の家事とご飯は俺の担当だ。下の2人は残念ながら料理の才能がないようなので仕方ない。前に作らせた時に暗黒物質を生成してからそこは諦めた。
洗濯はこの年頃だし俺がやるのは嫌がるかと思ったけど……そんなこと気にする妹じゃなかったからね。むしろ俺としてはもう少し気にして欲しいが……信用されてると思ってスルーするしかないか。
「あ、お兄ちゃん。栞泣いてるー。ご飯かな?」
「分かった。ミルク作るから」
ちなみに栞の夜泣きも基本的には俺の担当だ。琴音は受験生だし、隼人は部活がある。下2人はまだまだお眠だから無理だし消去法で俺がやってる。まあ、可愛い妹のためだし苦ではないけどね。昼間は祖母が見てくれるし。むしろ祖母に悪いと思うけど……まあ、祖母も孫の面倒見るの楽しんでるからいいのかな?